DEFENSE 格内俊輔 事例:ゆず「REASON」
1月9日にリリースされた、 ゆずの37枚目の Single「REASON」のミュージックビデオです。タイムライン上でCFXを使用し合成されたカットを格内氏にデモンストレーションして頂きました。
格内:「この作品はSmoke2013のプレリリース6で仕上げました。プレリリースで仕上げるのは結構リスクを背負ってしまうので、実は敬遠していたんです。オペレーションの部分でもFlameとSmokeで全くかわってしまったので、完全に移行するまでは止めておこうという気持ちでいましたが、プレリリース版で完パケたという特異な方が隣にいらっしゃたんで…。あ、いけるんだ!と言う所にこの話を頂いて、実践で覚えるのが一番という事でチャレンジしてみました。」
Youtube:ゆず「REASON」
格内:「ご覧のように企画が壮大すぎて、どこから作っていけば良いのか誰も見えていなかったんです。しかも納期までの時間も無くCGデザイナーさんと一緒に作っていくしかないという事で、いっそマシンごとCG会社に持ち込んでみるか!と意気込んで持っていこうと思ったんです。けど、MacProなんですよね。重すぎるという事でマネージャーに電話して車を出して運んでもらって作業しました。」
実際のCFXの事例を、左から順を追って説明をしていきます。(SmokeのCFXは左から右のアウトプットに流れていきます。)ミュージックビデオの4:21くらいの1ショットです。
(CFXの全体図です。左から右に流れます。)
格内:「まず背景から作っていきました。CGデザイナーさんにマット画を書いてもらい、Photoshopベースだったので、そのまま読み込むとレイヤーごとにバラバラに読み込まれます。3D上に雲を配置して静止画でも動いて見えようにしました。 ポイントとしては一番後ろのレイヤーの上部をExtended Bicubicでのばしているだけなんですが、これで立派なタイムラプスの雲が出来上がります。 」
(雲を立体的に配置し動かしている。)
格内:「これにカラコレしてブラーをかけて、実写のベースにカメラトラッキングをし、雲素材を足して今回の目玉CGである煙を足します。トリプルアディショナルの小張さんというデザイナーさんがいらっしゃるんですけど、その方の伝家の宝刀であるパーティクルなんですが、凄くカッコいいんですよね。これを乗せ、人物を乗せて、人物のマスクのエッジを取ってちょっとなじませます。」
格内:「このままだと、まだ安っぽい感じの合成なので、ここからがコンポジターとしての本領発揮です。CGのクオリティーは6-7割はコンポジットが左右すると言って過言じゃないと僕は思っていて、3大要素みたいな所がデフォーカスとカラコレと光かなと考えています。」
格内:「光を足すためにサファイアというプラグインを使用しました。白い点を置き光源にして、人物のマスクとSubtractで合成しパカパカしている感じを出します。これを元にサファイアのレンズフレアを使って作成し、少し動作が重かったので、今回Smoke2013の目玉である(これは僕の中では神機能だと思っているんですけど…)Create CFXという、いつでもどこでもやりくれる機能を使って一度レンダリングします。それをActionで乗せ、人物で光を遮ると太陽が隠れるようにします。次にグローを足してカラコレをします。色を複雑に出したかったので、カーブでめちゃくちゃに弄っちゃってるんですけど。次のノードではガベージマスクで周辺のぼけワイプみたいのを作って乗せます。」
グレーディングは入ってないんですか?
格内: 「入ってないです。グリーンバックのときはほぼ自分でカラコレもするようにしています。」
サイズはフルですか?ハーフですか?
格内:「流石にフルHDだと自分の首を絞めてしまうので、ハーフサイズですね。」
カメラは何ですか?
格内:「アレクサです。データはProResで貰い、オフラインからはスムーズにデータ移行できました。後で追加の素材があっても、すぐに読み込めるというのはかなり大きかったです。」
格内: 「今回監督がアフターエフェクトで別に人物の動きを作っているんですが、それをDropboxとかクラウド上にリンクを張っておけば、違う場所に監督がいたとして、名前が同じであれば勝手に自動で入れ替わるというようなハブとしての使い方ができるんで、これからはSmokeが鍵になるんじゃないかなと思います。」
仕上げはどれくらいかかったんですか?
格内:「結局CGの方と同じ日にスタートしちゃったんで、そんなにガツガツは進まなかったんですけど。2週間ほぼ缶詰でやってましたね。それでもヒーヒーいいながらやってたんで去年の良い思いでなんですが…(笑)。」
格内:「今回やり方を特殊にしてみました。V1にグリーンバック、事前にマスク作業を行っていたんでV2にマスク。V3にグリーンキャンセルされた素材を置いてあります。面白い使い方があって、マスクをバッククリップと言って下のレイヤーから引っ張ってくる事ができるんですよね。マスクをバッククリップに仕込んでいるんで、次のカットにデータを丸ごと投げることができます。」
(CFXの下のレイヤーをバッククリップとして持ってくる事ができる。)
ドラッグアンドドロップできるので、データのコピーが簡単なのがいいですね。
格内: 「次のカットは単純に切り返しなので、煙とか空とか反転すればいけるみたいな感覚で作業していました。」
コミュニケーションツールとしてのSmoke
事例の最後に格内氏は…
「このソフトは手法は変わると思いますが、使う人それぞれ無限のアプローチができるという事です。」
「僕もまだオペレーションの方法は確立できていないのですが、これからもっとユーザーが増え、無限の可能性を秘めたこのソフトを育て上げる事が出来ると、きっと最強のソフトになれるんじゃないかと僕は思っています。」
「このソフトのおかげで色々な人のつながりをここ数ヶ月で増やす事ができました。昔はポストプロダクションの機材を持ち運んでCG会社で作業するなんて事は絶対に不可能だったんです。それが可能になり、CGとの距離が一気に縮まって入ってくる情報が格段に増えたんですよね。今まで見えなかった部分が見えるようになったり一気に視野が広がりました。Smokeがハブとして中心に居るんで、忙しいんですけど楽しいです。」
「クラウドとスモーク、スカイプのようなチャット的なものを併用すれば、日本中や世界中どこにいてもフィニッシングできる。それが実現可能な所まで来ているっていう事なんです。」
「映像業界に入ってもうすぐ10年になりますが、10年前は全く想像できなかったんですよ。購入を考えている皆さんも、人との交流を増やすコミュニケーションツールとして買って頂くと世界が一気に広がると思います。」
「もちろんソフトの便利さもありますが、僕はそういった用途でも今後このソフトを使っていきたいと思います。」
と述べています。
株式会社 DEFENSE
http://d-fence.jp/
トリプルアディショナル
http://www.3additional.com
続いて水野氏のデモンストレーションです。
レポート3はこちら
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