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第9回映画の復元と保存に関するワークショップリポート 3

 
なかなか更新できませんでしたが、ライトニングトーク の第2部です。
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ワークショップリポート1
ワークショップリポート2

フィルム保管庫のご案内 共進倉庫株式会社 田澤 宏和氏

共進倉庫は角川大映スタジオや東映ラボ、日活撮影所など映画関連施設が数多くある東京都 調布市の飛田給にあり、25年前にフィルムの保管サービスを開始、フィルム専用の冷蔵保管庫の設備を持っています。
フィルムの保管で問題になるのが、ビネガーシンドローム。可燃性のナイトレートフィルムが不燃性のトリアセテートベースに変わり、寿命が100年と期待されましたが、適切な温度や湿度管理を行っていない場合、ビネガーシンドロームが発症し、それを待たずに劣化していく事が判明しています。
ビネガーシンドロームはベースに使われているアセチル基が水分、熱、酸によって酢酸を発生する事により起こります。発生した酢酸が触媒になり、さらに劣化を進める原因にもなり、一度発症してしまったビネガーシンドロームは遅らせる事はできても止める事は出来ません。アメリカの研究機関によると、温度24度、湿度50パーセントで25年で発症することが判明しているそうです。
共進倉庫では長期保存のための温度5度、湿度40%の低温低湿の保存庫があり、庫内で発生する酢酸の除去するフィルターを持つ除湿器が設置され、酢酸の濃度が低減されます。
田澤氏は、ビネガーシンドロームはフィルムだけでなく倉庫にとっても問題があると語っています。エアコンの冷媒ガスに酢酸が溶け込み、それが原因でガス漏れが発生するため、1年に1台は空調機を交換しているそうです。
その他、共進倉庫ではフィルム検査サービスや保管管理だけでなく、映画配給会社・映画製作会社向け物流サービスとして、DCPなどの媒体を管理するシステムや、衣装、大道具、小道具、撮影機材の保管などもしています。
詳しくは共進倉庫株式会社にお問い合わせください。
フィルムは「生もの」といわれますが、きちんと健康管理をしないと寿命が縮まります。イマジカの方の話だと、1年に一度卷き直しをするだけでも効果があるそうで、反りや返りを防ぐために逆卷きに卷く事もあるそうです。
 

ラオス国立フィルム•ビデオアーカイブの概要 東京光音 鈴木 伸和氏

映画保存協会に加盟している東京光音ではフィルムの修復やクリーニング、テレシネなどの作業を行っており、フィルムの復元と保存に関し積極的に活動しています。
東京光音
東南アジア太平洋地域視聴覚アーカイブ連合(SEAPAVAA)の会議がラオスで行われ、鈴木氏が今年5月ラオスに行かれた際のLao Cinema Departmentの報告です。ラオス人民民主共和国は独立から内戦、社会主義へと変遷した国家で、以前は16館あった映画館は1館もなく、現在国内で映画が観られる施設は国立のLao Cinema Departmentだけ。
Lao Department of Cinema
王国時代のフィルムや、断片しかないドキュメンタリー、ナショナルビデオの保存が多く、近年の1995年からは国内で12作品が製作されましたが、3作品しか現存していないそうです。近年ラオアートメディアカンパニーが自らの手で映画を製作するようになり、検閲などはあるものの徐々に映画の光を取り戻しつつあります。
復活を遂げるラオス映画海外留学組により、政府検閲の限界に挑戦した作品も! | ザイオンライン
なぜか取り壊された映画館の跡地に、日本のフィルムと思われる一片が残っていたそうです…。
 

「神戸での洗浄ワークショップ報告」コガタ社 中川 望氏

コガタ社は東日本大震災の際、NPO法人 映画保存協会の災害対策部から依頼を受け8mmフィルムの洗浄作業に携わり、その活動の一環として、東京と神戸で8mmフィルムと家庭用ビデオテープの簡易洗浄のワークショップを開催しています。
コガタ社
神戸 新長田の元小学校(神戸市立地域人材支援センター)では震災体験学習として行われ、実際の洗浄作業の流れは、桶に水を張りフィルムを洗い流しガーゼで拭いてタオルでぬぐい、クリップで吊り乾燥させます。作業で使う道具は100円均一のショップなどで手に入るもので、手軽にそろえる事ができます。
災害時に大切なのは「コミュニケーション」。自然災害等で被災した映像資料の緊急的な対処の仕方を通し、様々な事を考えるきっかけになればと中川氏は語っていました。
若い方は8mmやビデオテープに触れる機会があまり無く、なかなか体験することができない貴重な機会だったようです。
 

「女優•轟 夕起子と映画監督•春原 政久の研究」 フリー映画研究者 山口 博哉氏

山口氏は猪俣勝人氏の名文に魅了され、女優•轟 夕起子の研究を始めたそうで、自費出版でフィルモグラフィを執筆しています。個人で発行しているフリーペーパー「月刊トドロキ・ユキコ」は関西のミニシアターを中心とした各映画館で入手できるそうです。
アーカイブとして収集、保存するには誰かがその価値を見つけて再評価する事が重要です。歴史的評価であったり、地理的、民族的な評価かもしれませんが、監督や脚本、俳優などにスポットを当てる事で、より広い範囲で復元の可能性が高まるのかもしれません。
 

「映画館にピアノを!」 サイレント映画ピアニスト 柳下 美恵氏

来年で映画が誕生して120年。今では映画に音が付いているのは当然ですが、サウンンドトラックが記録ができる以前は全て無声映画です。当時は映画館で活動弁士や生演奏などが、映し出される映像に合わせて即興で音を当てていました。
イタリアのボローニャ復元映画祭など、ヨーロッパではサイレント映画を上映する劇場でのピアノの設置は当たり前で、ベルギーの王立シネマテークにはグランドピアノが常設されているそうです。
日本でピアノの伴奏が注目されるようになったのは。2012年のサイレント映画『アーティスト』。実際にシネコンで常設のピアノがあるのは1館だけ。なかなか理解されるのは難しいようですが…柳下氏は、NPOの力で再建しリニューアルされたシネマ尾道での生伴奏付きの上映や、UPLINKでの「ピアノde シネマ」のイベントなどサイレント映画の普及に努めています。
柳下美恵mie yanashita
映画は音が付いたとたん、全く別の作品になるんですよね。不思議な物です。

おもちゃ映画ミュージアム準備室 大阪芸術大学 太田 米男 教授

フィルム復元と修復に長く携わってきた太田教授は、「おもちゃ映画ミュージアム」の創設をめざし、WEB上に準備室を立ち上げています。おもちゃ映画(玩具映画)とはトイフィルムとも呼ばれ、玩具映写機とともに販売された短編のフィルムを指します。その中には、無声映画時代からトーキーに変わった時に切り売りされたフィルムなども含まれます。
現在プロジェクト自体は終了していますが、2003年から大学の助成金を得てスタートした「玩具映画プロジェクト」では約600本の玩具映画フィルムを復元しています。太田教授は、これらの復元後のフィルムを観れる場所、常設の場所がない事から「おもちゃ映画ミュージアム」の設立を思いついたそうです。
玩具映画|TOY FILM PROJECT|玩具映画および映画復元・調査・研究プロジェクト
おもちゃ映画ミュージアムでは「アナログ」に注目し、手回しのマジックランタン(幻灯機)や光学玩具など映画前史の機器の展示を行ったり、修復したおもちゃ映画の上映を行う予定です。映画とアニメの街である京都の町家を借りて、日本で一番小さい博物館を目指そうと支援と協力を募っています。
おもちゃ映画ミュージアム準備室
 
次のライトニングトークの第3部では、技術的な話になっていきます。
 
 
 

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