第9回映画の復元と保存に関するワークショップリポート 2

 
ライトニングトークの第1部です。
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ライトニングトークとは

時間の決められた短い講演の事です。いわゆる「電光石火」。鐘が鳴ったらそこで終了です。言いたい事を短い時間に収めるので、とても濃い内容になります。

「フィルムの上映環境を確保するFシネマプロジェト」コミュニティシネマセンター 神田 麻実氏、西川 亜希氏

コミュニティシネマセンターは2009年4月に設立された一般社団法人で、映画祭運営組織や自主上映団体、美術館、博物館、フィルム・コミッションなどと連携をはかりながら、地域における映画・映像文化の振興に貢献しています。
国内外のインディーズ系映画や古典的な作品、短篇、学生映画、実験映像などを取り上げ、これまであまり上映される機会のなかった作品を特集し、専門的な知識を持った上映施設のあるシネマテークで上映・巡回する「シネマテーク・プロジェクト」や地域のミニシアターなどが連携した「シネマ・シンジケート」での配給受託などを行っています。
一般社団法人 コミュニティシネマセンター
「映画」は商業映画だけではありません。
文化芸術振興基本法において「映画」がメディア芸術のひとつとして位置付けられたことで、歴史的、地理的に広い範囲の作品をオリジナルな状態で鑑賞する機会を増やしていく必要があります。都市部に上映環境が集中するため、どうしても地域的な格差が生まれ、コミュニティシネマセンターではこれらの格差を是正し、芸術的・文化的、公共的な価値を重視した作品の上映機会を普及していくために積極的に取り組んでいます。
問題になるのが上映環境の危機であったり、オリジナルな状態で映写です。Blu-RayやDCPになっておらず、フィルムでしか存在しない作品も数多くあります。
Fシネマプロジェトは、フィルムの上映環境を整理しようというプロジェクトです。
2014年度は上映素材の確保について配給会社や現像所、フィルム製造会社、保管庫、フィルムアーカイブ等を調査対象とし、アンケートやヒアリングを行い、それぞれが抱える問題を整理した上、今後のフィルム供給維持に何が必要かを調査します。
また、映写機材の現状についてはメンテナンスや入手困難な部品の情報について情報収集および情報の共有化を行います。映写機材を維持するためのランプ等の代替品の有無や修理技術者の情報、上映用の移動車などの情報を収集など、HPで映写機関連情報を随時更新する予定だそうです。
次に映写技師の確保で、移動映写、出張映写を行っている会社を調査対象とします。フィルムを上映できる施設が限られ、ミニシアターも閉館も相次ぐなか、フィルムの映写技師は特別上映や映画祭などのイベントなどに活動の場を移しています。これらの業者と連携を取りフィルム上映を維持するとともに新たな上映の機会の創出や、何が必要かを調査します。
さらに全国映画館、ミニシアター、公共ホール、シネマテークなどでフィルム上映の現状についてアンケート調査し、フィルム上映している施設については、なぜフィルム上映を行っているのか、今後どうしていくのかなどヒアリングを行っていくそうです。
調査始まったばかりで、情報提供やアンケートの協力など詳しくはコミュニティシネマセンターにお尋ねください。
10月22日、23日に東京国立近代美術館フィルムセンターでコミュニティシネマ会議が開催されます。
全国コミュニティシネマ会議
トークの中、映写技師の技術や経験を”聞き書き”によって記録に残す「かきおとしプロジェクト」も紹介されました。
かきおとしプロジェクト
 

「映画学におけるホームムービーの研究と展望」 京都大学大学院 久保 豊氏

ホームムービーとは、8mm、9.5mm、16mmフィルム、VTRなどで撮影された個人的な記録映像を指します。海外での文献はいくつかあるものの、1冊にまとまったものはなく、ドキュメンタリーとして言及される事はあっても本質や定義を語るには至らず、映画というジャンルの中でホームムービーが語られる事はほとんどありませんでした。なぜホームムービーを撮影するのか?といった疑問から久保氏は研究を重ねています。
その中で、2013年に発刊された「懐かしさは未来とともにやってくる」という書籍では、残された映像資料が地域社会の過去の姿を伝える貴重な文化財であり、映像資料としても貴重である点にも触れています。

久保氏は日本のホームムービーの研究に関し「つながり」が重要だと語っています。
ホームムービーは個人的内容が多く含まれ、一般に公開される事はあまりありません。米国のフィルム保存専門家らの提案で2003年にはじまった「ホームムービーの日」が毎年10月の第3土曜日に行われ、世界中の映像アーキビストが地域や家庭に眠る映画フィルムを上映、その救済と保存を訴えます。「ホームムービーの日」のイベントは各地で行われ、この日をきっかけに貴重な映像が発掘されるケースもあります。
久保氏は、「ホームムービー」に関し、まだ明確ではないが複雑なカテゴリーであるとしています。
もしかしたら、一番身近にあるアーカイブって「ホームムービー」なのかもしれません。
 

「東北での地域映像アーカイブの取り組みについて」 東京藝術大学 三好 大輔氏

東京藝術大学 社会連携センターでは「風景と心の修景および創景事業」で東日本大震災で被災した被災地のホームムービーを収集し、集められた12時間以上の8mmフィルムの映像を元に「よみがえる大船渡」を製作し公開しています。ワークショップでもその映像が一部公開され、大船渡の駅前や祭りの風景などが映し出されていました。震災で被った泥とフィルム自体の劣化で剥がすような状態だったそうで、公開された映像の一部に映っていた花畑のような模様はカビによるものだそうです。ヘドロまみれになった8mmフィルムは映画保存協会を通しコガタ社に依頼され、クリーニングが行われました。
コガタ社 小型映画(8ミリ・16ミリ)調査・機材貸出
再撮時には映写機に油が溜まってはクリーニングしての繰り返しで、それでも映写機にかからないフィルムがあったという事です。
風景と心の修景および創景事業
三好氏はプロジェクトを始める前に、ホームムービーは個人的な物である事から公開に対し戸惑いがあったそうですが、公開して欲しいという多くの声を受け実現できた事を嬉しく思うと語っていました。また、介護老人福祉施設での上映では、普段言葉を発することがほとんどない方が水揚げの映像で大きく声を挙げたそうで、昔の写真や映像で喚起させる「回想法」という心理療法があるそうです。
東京藝術大学 社会連携センターは様々なアーカイブプロジェクトに参画し、2014年12月から東京ステーションギャラリーで開催される東京駅開業百年記念で上映される記録映像「東京駅100年の記憶」では東京駅に関するフィルムの募集をしています。(9月末日まで )
また、小豆島8ミリフィルムアーカイブでもフィルムの募集をし、墨田区や足立区とは違う島の魅力を伝えるとしています。
小豆島8ミリフィルムアーカイブ
 

行政と連携した映像アーカイブ活動の可能性 株式会社ワトソンズ 高橋 克三氏

東京都 北区と協働事業で行う「映像アーカイブによる街おこし」での活動が報告されました。北区では一般家庭で撮影された8mm、16mmフィルムを収集し、上映会や図書館での貸出を通じて広く公開する事業を行っています。
10ヶ月で集まったフィルムは約200本。月に数十本がテレシネ作業されています。年に3回上映会を行い、応募者数は700人。そのうち500人に見て頂いたそうです。北区は元々コミュニティが濃密であるという土地柄で、映像アーカイブが町の活性化に繋がることからこのプロジェクトが出発。地域アーカイブプロジェクトとして、とても参考になる事案です。
街づくり・フロンティア21
その活動の中で行政と連携しなければ出来なかったことや、様々な問題が見えてきたそうです。まず、収集されるフィルムが北区に限定される事。一部でも北区の街や暮らしと判断される映像が含まれていないと受け入れが出来ません。持ち込まれたフィルムの約30パーセントがそういった物で、中には福島や京都が映っているものや、歴史的に貴重と思われるフィルムがあっても受け皿がありません。
フィルムの発見は図書館など公共のスペースでチラシを置いたり、ホームページなどで告知をしています。発見されたフィルムは区が史料的な判断をし、共有財産になると判断された映像は複写・編集・公開など著作権を北区に譲渡してもらう契約を結び、無料でDVDにテレシネ後にフィルムとともに所有者へ返還されます。デジタルデータは区で保存され、プライベートな部分はカットし編集、図書館での貸し出しや区民センターでの上映に利用されます。
例えば、区内の老人ホームで「回想法」としての上映も行っても、必ずしも幼少期を北区で育ったわけではないという事。全国で映像アーカイブのネットワークがあれば可能かもしれないが、分類基準ができていないことも問題の一つと高橋氏は述べていました。
また、著作権の問題は想定内としても、いわゆる「ホームムービー」には思いが詰まっており、単にサインをしてくださいとは訳が違う。資料化する際に聞き取りやプライベートに対するガイドラインが必要で、ボランティアが業務を行って良いのか、守秘義務が必要なのではと語っていました。
 

ホームムービーの日について 根津映画倶楽部 島 啓一氏

根津映画倶楽部は東京 谷根千(谷中・根津・千駄木)エリアで活動し、家庭で眠るフィルムを発掘してで楽しむ「ホームムービーの日」を毎年10月第3週に開催しています。
根津映画倶楽部
「ホームムービーの日」は国際的な祭典で、2003年にはじまり、2014年には17カ国、国内で19会場で開催されます。
Center for Home Movies
島氏は見つける事、残す事、生かす事が大切だと語ります。多くの場合フィルムは引越しや建て替え、遺品整理等で失ってしまう事が多く、中身が見られないことが捨てられてしまう主な理由だとしています。上映するための機材も大切で、映写機、ビュアー、スプライサー、ランプが無いといった事などがフィルムを処分してしまう原因になっているようです。
DVD化やデジタル化しても捨てないで、フィルム自体を残すことが重要です。ホームムービーの日では持ち寄ったフィルムを上映します。その中で特に持ち主の話が面白く、生活や時代が湧き出るのだそうです。
「ホームムービーの日」では、大切な8mmフィルム預かる事になるので、傷つけず、安全に取り扱うために、映写を通じてフィルムのインスペクション(事前検査)や小型映画を扱うノウハウも身につけることができます。
8ミリフィルム インスペクション 映写研修 資料(NPO法人映画保存協会 PDF)
2014年の国内会場は、愛媛、神戸、小豆島、京都、東大、谷根千、調布、北青山、蒲田、川越、仙台、弘前、大阪、神田、中野、札幌などで開催されます。
ホームムービーの日 Home Movie Day Japan(Facebook)
フィルムとともに持ち主の記憶も保存しているのかもしれません。たぶん大切な人との幸せな時間がパッケージングされているんでしょうね。
ライトニングトークはまだまだ続きます。
 
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