SMPTEの規格化でIMFがマイルストーンに到達
SMPTEはIMFフォーマットにProResやACESなどを盛り込むことで、一つの節目を迎えたことを発表しました。
SMPTE’s Latest IMF Plugfest Makes Significant Progress Toward Interoperability
IMFとは「国際通貨基金」ではなく、映像配信のフォーマットのお話です。
IMFは、Interoperable Master Format(相互運用マスターフォーマット)の略で、Netflixなどのインターネット映像配信サービスのマスターフォーマットとして採用されている次世代の番組交換用のフォーマットです。
IMFについてはこちらをご覧ください。
フォトロンコラム「Netflix」がやってくる!
IMFはアクセスサービス(字幕、キャプション)によるマルチリージョンの配信や、高ダイナミックレンジ(HDR)広色域(WCG)イマーシブサウンド(オブジェクトベースのオーディオ)などのコンテンツを効率的に処理するように特別に設計されたフォーマットです。
映画ではデジタル化によりDCP(Digital Cinema Package)によるマスタリングが一般的ですが、放送や配信ではそれに代わるフォーマットが長い間模索されてきました。
特に長編のバージョン管理が急激に増加し、放送にとどまらず配信のための多言語や字幕などのサポートも必要になることから、マスターの映像と音声や字幕などを分けて作成しパッケージ化する必要が生まれてきます。これらを別々のマスターで作成すると膨大な量になり、限りある資源が圧迫され、時間や人的資産も必要となります。
最初に要求されたものは長編映画のためのフォーマットです。DCPフォーマットをベースに、2013年にSMPTEは「ST2067-2」を批准し、相互運用可能なマスターフォーマット(IMF)が作成されました。
これはJ2K(JPEG2000)コーデックを用いたパッケージングで、高画質を維持してバージョン管理を行うには優れたフォーマットで、放送で多く使われるフォ ーマットではありません。放送局や配信業者などのブロードキャストコミュニティでは多くのアーカイブ資産があり、常に新しいコンテンツが追加されています。
すでにテープベースからファイルベースに移行しています。最も普及しているのはネイティブのXDCAMファイルフォーマットで、欧米では放送用のマスタリングのための「AS-11」フォーマットが採用されています。ただしこれは従来の放送ベースのフォーマットのため、統一性はありますがバージョニングの問題を根本から解決するものではありません。
そこで「車輪の再発明」を避け、放送と通信の広範なメディアのためのフォーマットとして「IMF」が注目されることになります。北米放送協会(NABA)と欧州放送連合(EBU)を中心とした主な放送局では、デジタル制作パートナーシップ(DPP)を通じて世界中のパートナーと協力し、テレビやオンラインマスタリング用に設計された新しいIMF仕様の開発を後押ししています。
この中でProResやH.264ベースのエッセンスを「IMF」に組み込むための作業が進行してきました。
2018年10月にカリフォルニア州ハリウッドで開催されたSMPTE技術委員会が主催するIMFプラグフェストでは、IMFファミリの国際規格(SMPTE ST 2067)が相互運用に向けて一つのマイルストーンを達成したことを発表しています。
この中では大きく分けて4つの焦点があり、それぞれが規格化されています。
- World Wide Web Consortium (W3C) Timed Text Markup Language (TTML) Profiles for Internet Media Subtitles and Captions 1.0.1 (IMSC1)
IMFの字幕とキャプションの形式で、W3Cによるインターネットメディアの字幕とキャプション1.0.1(IMSC1)のタイムドテキストマークアップ言語(TTML)プロファイルをサポートし、世界中からアクセス可能なエクスペリエンスを実現します。
- SMPTE ST 2067-50:2018(IMF Application #5)
アカデミーカラーエンコーディングシステム(ACES)イメージエッセンスでの配信、交換、アーカイブを目的とした規格です。(ACES アカデミーデジタルソースマスター)
- SMPTE RDD 45:2017(Application ProRes)
ProResイメージエッセンスのサポートを追加しています。
- SMPTE ST 2067-100:2014(IMF Output Profile List)
IMF出力プロファイルリストで、IMFディストリビューションマスターから生成された成果物をクリエイティブに制御できます。
SMPTEで規格化されることで、様々なベンダーが対応することを意味します。さらにIMFで統一されることでQCやトランスコードなど様々な分野で自動化されることが予想されます。
Adobe Premiere Pro CC 2019ではWindowsでProResが書き出せるようになりました。この流れが直接関係しているかどうかはわかりませんが、ProRes形式の標準化に繋がるのかもしれません。
現在標準では、Premiere Pro CCはIMFのマスタリングやインポートなどはできません。IBC2018で発表されたMarquise Technologiesの「IMF Importer」を使うと、マスタリングには別のシステムが必要ですが、ユーザーはPremiere Pro内でIMFパッケージをインポートして、使い慣れた環境で効率的に作業することができます。
DaVinci Resolveでは現在J2K形式でのIMFのデリバーをサポートし、Netflix用のプリセットが用意されています。
Is television versioning about to go IMF?
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