なかなか更新する時間がないですが…ライトニングトーク の第3部です。
題名不詳玩具フィルムの調査 株式会社IMAGICA ウエスト 柴田 幹太氏
イマジカウェスト フィルムプロセス部の柴田氏は、大阪芸術大学から題名不詳の玩具フィルムの調査を依頼され、そのフィルムの調査を行っています。復元不可能ではないが、劣化変形した状態だったそうです。
フィルムの状態から35mm 可燃性ポジと判断できるくらいで、フィルムから読み取れる情報は赤く染められた船が炎上いる映像と、インタータイトルに記されたCINESの文字のみ。リワインダーに掛けコマ数を測定したのち、そこから紐解いていきます。
通常エッジコードからメーカーやフィルムの種類が判別できますが、古いフィルムはその資料も残されておらず、どこの物かもハッキリとしません。CINESの文字が中国向けを指すのか、フィルムメーカー名なのか製作社名なのか、推測しかできず、3本あったロールはどれが最初のロールなのかも判らない状態で、アーキビストに相談しながら作業を進めていったそうです。
イマジカウェストでは、アーカイブとして持ち込まれたフィルムは、全て手作業でチェックしています。その中から一部分であっても基礎情報を拾い上げることができるため、柴田氏は「ラボとしては救えるフィルムがあれば救っていきたい」と語っています。
株式会社IMAGICAウェスト
ナイトレートフィルムの発火点に関する検証 株式会社IMAGICA ウエスト 松尾 好洋氏 久保 真人氏
引き続きIMAGICAウェストのトークです。松尾氏、久保氏は危険物取扱免許を所持しており、保存中における自然発火、取り扱いにおける発火など、どのような場合に危険か実際に発火点について検証しています。
初期の映画フィルムのベースとして使用されたセルロースナイトレートは、危険物に分類されています。可燃性であるナイトレートフィルムがどのような場合に危険か、物理的特性と危険性について説明しています。温度17度、湿度30%の室温で保存したナイトレートフィルムは、2008年にあった乳剤面の画が2013年には消失していたそうです。ナイトレートフィルムは自然に劣化分解していきます。
このような劣化の進んだフィルムと比較的保存状態の良いフィルムを少量使い、赤外線のヒーターとアルミ版を用い発火点について比較検証しています。発火点といわれる170度付近でも発火せず、状態の良いものは300〜400度で瞬時に発火しています。燃え方の激しさは状態の良い物の方が激しかったそうです。一度燃え始めると、水中でも燃え続け、延焼を食い止める事はできても水で消す事は出来ません。
両氏はナイトレートフィルムに関して今後多くの検証や資料が必要で、常に安全を確保することが大事であると語っています。
古い映像は文化的な価値もあり、東京国立近代美術館フィルムセンターの相模原分館では、映画保存棟IIIが竣工され、重要文化財映画フィルム保存庫としてナイトレートフィルムが保存されることになります。
IMAGICAグループの映像の保存・修復・活用サービス | Picture Archive Service
音声素材の保存とデジタル化 Audio Mechanics 宮野 起氏
Audio Mechanicsではオーディオの資産保全とマイグレーション、 サウンドの修復を数多く行なっています。アーカイビングの問題は映像だけでなく、オーディオにもあるそうです。オーディオは映像と比べデジタル化の波が早期に訪れ、1990年代にデジタル化したアナログ素材が使えない、使い勝手が悪いといった状態で保存されています。メジャーな映画でさえ、不適切な保存方法でアナログからデジタルの移行が行われ、オリジナルの消滅や修復版しか保存されていないケースも見られるそうです。
保存媒体の陳腐化やファイルフォーマットの陳腐化で使えなくなっているものも数多くあります。テープの特性上、伸びたり縮んだりといった物理的な変形やドロップアウトによるデータの欠落などは不可避で、今後はその事を見据え、それらをどう避けながらデジタルアーカイブしていくかが課題になります。ファイル名に関連情報を含めたり、一緒に写真や文書を添付するなど、客観的な情報も一緒に含めることで特定の素材がアーカイブされたかを理解できるようになります。
Audio Mechanics | オーディオメカニクス
ゴジラ(1954)デジタルリマスター版制作について 株式会社東京現像所 川俣 聡氏
第一作の公開から60周年を迎えたゴジラはデジタルリマスター版が製作され、2014年6月7日から東宝系劇場で公開されました。
オリジナルのフィルムはナイトレートのデュープネガおよびデュープポジが現存し、その他、封印されたデュープネガが存在していたそうです。東京現像所では4Kでスキャンする前にフィルム状態検査や素材選定を行い、マスターにデュープネガを選定し、欠損部分は他のフィルムで補う形でリマスター作業が行われました。封印されたデュープネガは傷や欠損部分が多く見られ、それが「封印された原因」ではないかと川俣 氏は語っています。
ARRISCAN(アリスキャン)で4Kスキャンし、DI(デジタルインターメディエイト)工程でレストア(傷修復)、シャープネスの調整、スタビライズ、カラコレ等が行われます。最終的に劇場での公開のため、今までの基準とは違った形でレストア作業が行われたそうです。DCPになってどう見えるか、劇場でどう見えるかを想像しながらチームで判断していくとともに、シネコンでどうみえるか商業ベースでも考える必要があると語っていました。
当時のフィルム上映に限りなく近ずけるために、フィルムらしさを残したまま修復作業を行う必要があります。特にサウンドのレストアでは意図的にノイズを残し空気感を出すことでゴジラの鳴き声の迫力を高めています。
東京現像所|TOGEN
また、ゴジラ4Kプロジェクトとして日本映画専門チャンネルやChannel 4Kで放送されています。
史上最高画質!ゴジラ4Kプロジェクト|総力特集ゴジラ|日本映画専門チャンネル
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