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DCCJ&SKJ主催シンポジウム2013 リポート

DCCJ&SKJ主催シンポジウム2013が『映像革新!4Kの世界から見える最新技術とそのビジネスに与えるインパクト』と題し、2013年5月22日(水)慶應義塾大学三田キャンパス 東館6階ホールにて開催されました。イベントの詳細は以下からご覧になれます。

DCCJ&SKJ主催 シンポジウム2013“映像革新!4Kの世界から見える最新技術とそのビジネスに与えるインパクト”NEWS Flash

DCCJ&SKJ主催シンポジウム2013 リポート

「デジタルシネマとDCI規格認証の最新動向」慶應大学専任講師 金子 晋丈 氏

DMC研究センター

慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究センター(DMC研究センター)では早くから4Kデジタルシネマに取り組んでいます。2011年に三田キャンパスから移転した日吉キャンパスには4Kステレオ3D上映可能なスタジオ設備があり、他の上映施設と異なる点は、IT設備の充実で、4Kデジタルシネマでのリアルタイム伝送やテレビ会議などを技術的に成功させています。

【プレスリリース】 4K超高精細映像による多地点テレビ会議の実演に成功

DMC研究センターは、高速なネットワークを使った超高品質デジタルメディアの制作、利用、流通ツールに関する協業ツールの構築を目指すCINEGRIDに参加し、産学官共同でハイエンドな映像製作の実証と検証を行っています。(CINEGRIDは、広帯域ネットワークを利用したメディア制作のコラボレーション技術研究に関する国際的な研究団体です。)

CINEGRID

また、数少ないDCI(Digital Cinema Initiative)の認証機関として認定され、テストラボとして機能しています。テストラボではデジタルシネマ機器、サーバー(再生機)、プロジェクタやデジタルシネマコンテンツの認証テストが行われ、コンプライアンス テストに通過したものは認証機器としてDCIに順次アップされていきます。

Digital Cinema Initiatives (DCI) 

コンプライアンステストでは、プロジェクタの投影色の測定やメディアブロックの色の再現性、全フレームの再生、音の遅延調整機能、外部制御の動作などがチェックされます。2012年10月にコンプライアンステストのバージョン1.2(CTP1.2)がリリースされ、v1.1の新規テストは終了しました。

今後の課題として、制作現場や劇場による音の違いをなくす高臨場オーディオ(TC25-CSSやDolby Atomosなど)やルビなどの日本語字幕の問題点の改善、ケーブル1本で4Kを伝送する高帯域HD-SDIや10Gbps、25Gbpsなどに取り組んでいくとしています。

デジタルシネマ上映の流れ

デジタルシネマの上映はフィルムにかわってDCPが使用されます。DCPとはデジタルシネマパッケージの略で、圧縮暗号化された映像と音声、字幕などを一つのパッケージにまとめたフォーマットです。映画館で上映される場合にはKDM(キー デリバリー メッセージ)という暗号キーとともに使用され、再生機(再生サーバーとプロジェクターのペア)と1対1で対応し、別の再生機では上映できません。これはデジタルシネマが不正に使用されることを回避するための仕組みです。

デジタルシネマ上映の流れ

デジタルシネマ対応のスクリーンは世界に89,000スクリーン(2012年)あり、約75%がデジタル化を完了しています。3DとVPF(バーチャル プリント フィー)を背景に、フィルムの終了が後押しをする形で急速に普及しました。

「撮影から CG 合成/VFX までのシーンリニアワークフローとは」
 Drawiz 代表 尾小山 良哉 氏

デジタル化で変化していく市場の中で、ハイエンドなコンテンツメーカーとしてどのように工夫していくかが語られました。 VFX、CG素材を撮影素材と同様に扱うためのパイプラインの解説です。

尾小山氏は、シミュレーションフローとクリエイティブフローをわけることが重要であると述べています。 技術の進歩とともにパイプラインは日々複雑化しており、素早い結果を出すためには、前段階に戻っては時間がいくらあっても足りません。シミュレーションフローとは単純に知識があれば誰でもできる作業の部分で、今まではアーティストがシミュレーションフローに携わる必要がありました。クリエイティブフローでは時間的制限がある中で試行錯誤を繰り返し、最良の結果を目指す必要があります。

これらを技術的に分けることで、質の高いコンテンツの制作が可能になります。

オリジナル作品の『Dusk』はF65で撮影され、16bitハーフフロート(半精度浮動小数点数)を使用したACESのリニアワークフローで処理されています。

Drawiz

ACESとは

アカデミー色符号化仕様(Academy Color Encoding Specification)のことで、米国・映画芸術科学アカデミー(AMPAS)が策定した、デジタル映像制作における色管理・色再現方法の新しい業界標準規格です。CIE-XYZに近いカラースペースを維持し、16bit符号化浮動小数点でデータが保持されます。

様々なデジタルシネマカメラは独自の色空間やビットデプスで処理されています。これらを表示するために一般的にはLUT(ルックアップテーブル)が使用されます。LUTを用いる場合、対象デバイスと1対1で対応しなければなりません(カメラ to Rec. 709など)。通常HDビデオモニタリングの場合sRGBに近いRec. 709(ITU-R BT.709)が使用されます。デジタルシネマではそれよりも広色域のカラースペースを扱うことができます。

IDTとは

ACESの場合、IDT(インプット デバイス トランスフォーム)を使用し、カメラのデータをACES色空間に変換します。

シーンリニアとは

人の 目に近い見た目するために多くのディスプレイはガンマ調整がされています。CGで作業する場合オブジェクトはライティングされ、ガンマをリニアで内部処理することで、光の減衰が正しく表現されるることになります。

RRTとODT

RRTとは基準レンダリング変換係数(リファレンス レンダリング トランスフォーム)でACES データを仮想的に理想的なデバイス上に表示した場合の基準となるもので、ODTは出力でバイス変換係数(アウトプット デバイス トランスフォーム)で、実際に表示するデバイスに対応するデータを適用します。

ACES色空間で作業し、対応するデバイスにアウトプット時に色変換テーブルを当てることで入力から出力までのカラーマネージメントができるようになります。(アウトプットデバイスは正確な色表現をするためにキャリブレーションが必要になります。)

16bit浮動小数点数処理

広い色空間で処理するほかに、ダイナミックレンジを維持する必要があります。色空間は広さですが、ビット深度はその間を埋める細かさです。ビデオの場合の多くは8bitや10bitで処理されており、デジタルシネマの場合より多くの情報が必要になります。特にハイライトや暗部の階調表現の場合に顕著に現れ、ビット数が足りない場合濃淡の縞となるバンディングの原因になります。

「シーンリニアワークフロー環境におけるレンダラー V-Ray の役割と今後」
 カオスグループジャパン CTO 正真 一久 氏

同様にCGおよびレンダラーでシーンリニアを使用する利点が解説され、さらに、CGのマテリアルが8bitであることの問題点や、実際の光学的なシミュレーションをした分光反射マテリアルや、分光光度をもとにした実際の塗料データからのサンプリングマテリアルの例が公開されました。 V-Rayは工業系と協業し開発を行っていくそうです。

V-Ray 3.0はこの夏にリリースされる予定です。

V-Ray Japanese official website – Chaos Group

「 VFX 映像パイプラインと生理的視覚効果」ロゴスコープ 代表 亀村 文彦 氏

映像は人間の視覚認識の再構築です。視覚効果は現実世界の経験が密接に関係しており、技術的、物理的に説明する必要があるとした上で、HFR(ハイ フレーム レート)の解説が行われました。

通常映画は24コマで上映されています。技術的進歩により、デジタルシネマでの高フレームレートでの撮影、上映が可能になりました。リファレンスとして120fpsで撮影された素材を元に低フレームレートとの比較が行われます。

ジャダーの低減
少ないコマ数だと物の動きがギクシャクしているように見える場合があり、これをジャダーと呼びます。また、カメラをパンニングした場合にはブレ駒が発生し、高フレームレートの場合これらが低減されます。

その他、フリッカーの低減やノイズの低減などHFRで撮影する事のアドバンテージが示されました。

Logoscope Ltd.

「4Kテレビの普及成功のシナリオ-2K、4K、8K共存に向けて」
尚美学園大学大学院教授 西 和彦 氏

講演内容はProNewsの記事をご覧ください。
[Report Now!]4Kの世界から見える最新技術とそのビジネスに与えるインパクト~DCCJシンポジウム – PRONEWS

現実的な問題点として海外と比べ4Kテレビのハードウェアの価格競争力が落ちている点と、HDと4Kのサイマル放送の必要性が語られ、4Kへの移行はしばらくはアップスケーリングであるという見方を示しています。輪郭強調だけでなく、ビット落ちをいかに解決していくかが課題であるとしています。

「4K/8Kテレビ放送のロードマップ」総務省衛星・放送課長 小笠原 陽一 氏

総務省では4Kは2年前倒しで2014年、8Kは4年前倒しの2016年に放送開始を予定しています。大型化とスマート化を軸に4k/8Kの普及推進のロードマップが示されました。

2013年6月5日に次世代衛星放送テストベッド事業に係る委託先として「一般社団法人次世代放送推進フォーラム」が決定しています。

総務省|平成24年度 次世代衛星放送テストベッド事業に係る委託先候補の決定

情報通信審議会情報通信技術分科会 放送システム委員会にて「超高精細度テレビジョン放送システムに関 する技術的条件」についての検討がおこなわれており、技術的条件を検討した結果2014年3月に情報通信審議会から一部答申がおこなわれる予定になっています。

総務省|情報通信審議会|放送システム委員会

「4K衛星伝送実験」
スカパーJSAT マーケティング本部サービス開発担当主任 今井 豊 氏

スカパーJSATでは過去2回、4K衛星伝送を使用したサッカーのパブリックビューイングをお台場シネマメディアージュで上映しています。通常のサッカー中継に近いマルチカメラで4K60pを中継し、2回目ではスロー、スーパースローによるリプレイも導入され、 衛星中継では120MbpsのAVCがトランスポンダ1本で伝送されました。

【インタビュー】「4K映像 衛星伝送実験のポイントと今後の課題」 スカパーJSAT マーケティング本部サービス開発担当主任 今井豊氏に聞く – InterBEE Online

放送の視聴者が4Kに対し何を求めているのかを考えた場合に、芸術性、作品性のほかにディテールの細かさが必要で、それらを検証するために事前にレンズ性能調査を行ったそうです。レンズには回折限界があり、F値と被写体の距離からシミュレーションし、スポーツ中継でどの程度の解像感が必要かを計算し撮影されています。

こうした実験の中で、4K放送は決して遠いものではなく実現可能な範囲であるとしながら、4K60Pでは検証を続けながら新しい映像体験を生み出す可能性があると述べられました。

「4K放送実用化へ向けた制作者からの視点」
 立教大学教授 DCCJ副理事長 佐藤 一彦 氏

4KはHDと違い、撮影時に最高の条件を得てはじめて威力を発揮します。

立教大学では2006年に新学科が設立され、4Kプロジェクターが導入されています。当初上映するコンテンツが存在しなかったため、オリンパス製オクタビジョンを使用し学内で様々な撮影条件でテスト撮影が繰り返されました。

ここでも4Kの問題点としてフォーカシングが挙げられ、高精細のディテールを保持するために様々なレンズとカメラの組み合わせから的確な選択する必要があると述べられます。撮影では、バッテリーの問題やフィールドモニタリング、フォーカシングにかかる人員の問題も指摘されました。

2008年には科学未来館と立教大学と共同で4Kデジタルシネマ『かぐやの夢』が制作されています。月面の映像はJAXAの協力を得て、NHKのHD収録されたコンテンツをアップコンバートする形で使用されています。

[4K Ready!] 01:科学と文学のコラボが4K実写で実現! – PRONEWS

さらに4Kの利用として、実際に手で触れることのできない美術品や工芸品やを4Kのディテールで表現した文化財保護や教育分野での活用や、デジタルスチル写真のスライドショーでの利用も挙げられました。今後の課題ではサイネージ利用として簡便な4Kプレイヤーの実用化が望まれるとしています。

「ODS•遠隔コラボレーションを加速する超高精細映像配信ネットワーク」
 NTT未来ネット研究所 藤井 竜也 氏

映画の制作から上映まですべてをデジタル化し、物理的な運搬を伴わないネットワークを利用した流通システムの構築が当初の目的でした。

近年の映画館のデジタル化に伴い、パブリックビューイングやライブ映像配信などODS(Other Digital Stuff)という「映画以外のデジタルコンテンツ」に利用されるケースも増えており、専用線以外の共用網を使用した高信頼のIPストリームの伝送の開発が続けられています。

共用網を使用することでパケットロスが発生しやすくなるため、高い誤り訂正機能を使用し、高スループットで大容量のデータを転送する方式を開発しています。既存のネットワークを利用し低コストで長距離の伝送が可能になり、2012年にはNHK放送技術研究所と共同で8Kのスーパーハイビジョンのストリーミング伝送実験を行っています。

また、次世代TVのためのトランスポートの新規格としてMMT(MPEG Multimedia Transport)の標準化を目指しています。

4Kの利用として高品質なTV会議や、データだけでなくライブ映像で編集作業を共有しコラボレーションで作業をする協調映画制作システムなどの開発を行っています。

NTT未来ねっと研究所

「4Kワークフローの動向」ソニービジネスソリューション株式会社 塚本 亮輔 氏

Sonyでは6月に4K対応液晶テレビ BRAVIA X9200A(55型、65型)を発売しています。さらに制作の面で4K対応のフォーマットとしてXAVCをリリースしています。

4Kのポジショニングとして、ハイバジェットな映画、CMやドラマなどの制作は4K RAW、ミドルバジェットの映画、CM、ドラマ、MVなどの制作はXAVCという位置づけになるそうです。

XAVCではMXFファイルのIntraフレーム形式に加え、MP4ファイルの「XAVC S」でLong GOP方式もサポートし、コンシューマー製品への展開も視野に入れています。

さらにライブ制作環境にも力を入れ、4K制作環境を既存のHDシステムにアドオンできるシステム製品の開発にも取り組んでいます。

ソニービジネスソリューション株式会社

「最新の超高精細4K/8Kシステム」株式会社 計測技術研究所 田端 宏至 氏

計測技術研究所では4K/8K対応の非圧縮レコーダーUDRシリーズの開発、販売を行っています。今後フルスペックとパフォーマンスの二極化が進んでいくとして、コストパフォーマンスの面ではPCベースや汎用の収録機器に目を向けながらも、高スペックの非圧縮レコーダーの開発に取り組んでいくと述べています。

その中で、8Kに対しても“e-shift”テクノロジーに注目し、圧縮ではない新しい高解像度に対するアプローチに対応する製品の開発を行っています。

“e-shift”テクノロジーにより8K解像度表示を実現した、世界初の量産モデル。業務用“D-ILA”プロジェクター「DLA-VS4800」を発売 報道資料 | JVC

スーパーハイビジョンのカメラ出力を e-shiftエンコーダーでDVIx4に変換した信号をUDR-40S-DV-4で収録し、D-ILAプロジェクターで映写することやe-shiftデコーダーでスーパーハイビジョンモニターに接続でき、以前より安価な構成で8K上映システムを構築できます。

UDRチェカーウォブシステムと名付けられたこのシステムでは、10GbEを通しロードオプションでホストPCでのインジェストも可能になるよう開発中だそうです。

株式会社 計測技術研究所

まとめ

シンポジウムの主催者でありビデオジャーナリストのSKJ(she knows journal)真咲 なおこ氏は2011年『デジタルシネマの侍達』という作品を制作しています。(イベントの詳細ページで見ることができます。)日本発の4Kのデジタルシネマ開発がどうハリウッドに取り入れられ現在に至っているかが語られています。

パネル討論の中で、単に4Kを語るだけではなく「次世代の映像コンテンツとはなにか」を考え直す必要があるのではないかという指摘がありました。

変化は同時にすべての分野で起こっています。 高解像度になることでデータは肥大し、様々なソースが混在することになります。4Kがデジタルシネマとしてだけではなく、放送、通信すべてに影響しており、これは映画が生まれたときに近い100年に一度のパラダイムシフトです。

特定非営利活動法人 ディジタルシネマ・コンソーシアム (DCCJ)

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