2012年9月28日Blackmagic Cinema Camera Test Driveと称して月島STUDIO(旧ASAHI スタジオ)でシークレットイベントが開催されました。事前に送付された招待状を持参の方のみ入場できます。
代官山スタジオ:月島STUDIO
フリースペースではドリンクや軽食が提供され、50坪ある7stはセミナー形式の会場として使用し、65坪ある8stでは白ホリバックの人物撮影と黒バックの低照度撮影がハンズオンの形で設置されています。
8stの中央ではMacBookProを使用し現場でのカラコレを想定したDaVinci Resolveのデモをインターセプターの田巻氏が担当し、7stのセミナー会場ではDaVinci Resolve 9のフルセットが設置され、デジタルエッグの大田氏がデモを行っています。
フリースペースにはDJブースが設置されていて、ライブ会場をシミュレーションした環境に2台のBlackmagic Cinema Cameraが置かれていました。セミナー中もハンンズオンコーナーを往来できたり、顔なじみのメンバーと交流したり、かなり小粋な感じのイベントです。
セミナー会場では、実際にデモ素材を撮影したメンバーによるプレゼンテーションが行われました。
BMCC Workflow:マウントキュー 山本氏
Blackmagic Cinema Cameraの解説から始まります。Blackmagic Cinema CameraはCinema DNG、ProRes422HQの2種類の記録フォーマットが選択でき、さらに今後DNxHDの220xコーデックもファームウエアのアップデートで対応する予定です。
ProResで撮影する場合はFilmとVideoの2つのLookが用意されています(CinemaDNGはメニューではFilmモードしか選択できません)。今回はCinemaDNGを使用したワークフローの解説になります。
CinemaDNGはAdobeのDNGをベースにした動画の記録フォーマットです。以前はAdobe LabsでCinemaDNGの読み込みのプラグインが配布されていました。
現在はCinemaDNGのページ自体がAdobe Labsから削除されています!(以前のプラグインはCS6では巧く動作しませんでした。)これは一部のユーザーに混乱を招いたようですが、Adobeは以下の発表をBlogで行っています。
”抄訳:Adobe Labsの最近のブログの投稿が、多くの人々を混乱させているようです。:
“CinemaDNGの主導権を放棄し、Adobe Labsではもはや提供されません。”
これは、Premiere ProのCS5.5用のCinemaDNGのプラグインがAdobe LabsのWebサイトから削除されただけです。 CinemaDNGフォーマットはオープンフォーマットであり続け、その開発はAdobeに限られるものではありません。
CinemaDNGファイルは、Camera Rawを含むDNGファイルをインポートするプラグインを持つAdobeのアプリケーションで開くことができます。これにはAfter EffectsとPhotoshopが含まれています。また、CinemaDNGファイルを巧く使うためにSpeedGradeのバグ修正のアップデートを提供しました。
Premiere ProがCinemaDNGファイルをインポートしない理由は – カメラ(と一緒に提供されているソフトウェア)です。リアルタイムでの再生が不可欠であるPremiere ProがCinemaDNGのパフォーマンスに満足していないだけです。
あなたにとってPremiere ProのCinemaDNGのネイティブインポート機能が本当に必要なら私たちに伝えてください。それが価値のある事ならばリクエストにお応えする準備はあります。
もちろん、その間After Effectsを使用しCinemaDNGをトランスコードしてPremiere Proで編集することができます。”
CinemaDNG in After Effects CS6 (and elsewhere)
なんか政治的においがプンプンしますが…。それはさておき。
CinemaDNGの場合は2400×1350ピクセルで記録されます。(DaVinci Resolve LiteはHD解像度までしか対応しません。CinemaDNGを用いネイティブレゾリューションでグレーディングする場合には必然的に同梱されるフル版を使用することになります。)静止画はQuickLookを使用し確認できます。
CinemaDNGの記録は連番形式です(RGB 12bitで1枚のファイルが約5MB)。カットごとにフォルダが作成されその中にwave形式のオーディオファイルと共に連番ファイルが記録されます。TCはメタデータに記録され、オフライン等にも有効活用できます。ProResの場合の解像度はHD(1920×1080)です。
実際のワークフロー
まず、CinemaDNGで記録されたファイルをDaVinci Resolveを使用し、ProRes LTで書き出します。それをWindowsのAdobe Premiereに渡しオフライン後にEDLで書き出し、MacProのDaVinci Resolveに戻しグレーディングを行います。その後にAfter Effectsで完パケます。(ファイナルグレーディング後は16bitのTiffのネイティブサイズで書き出しています。)
メディアのセットをバックアップコピーし3セット同じデータをとります。オフライン、グレーディングにそれぞれ渡し、EDLのデータだけで編集結果のやり取りをできるようにしています。
データをEDLで受け渡しする場合にリール名の扱いが少し違ってきますので、フォルダー名から必要な名前を抜き出す行程が必要になります。
詳しくは@yamaqさんのブログをご覧ください。
yamaq blog » DaVinci Resolveでリール名の切り出し方(追記)
*/*_%R_*_*_*/%D
というパターンを使用しています。TCはメタデータから抽出しProResのLTで書き出しオフラインへ渡します。
次世代のシネマカメラ:マリモレコーズ 江夏氏、デジタルエッグ 大田氏
江夏氏が壇上に立ちます。撮影された映像の素晴らしさに驚きを述べた一方、バッテリーの問題点が挙げられました。Blackmagic Cinema Cameraはバッテリーが内蔵です。そのためにこまめに充電する必要があります。江夏氏はVマウントを使用しリグに搭載する事で解決しています。Vマウントのシステムで1日フルに撮影できたそうです。
詳しくはProNewsの江夏氏の記事をご覧ください。
[DigitalGang!]Shoot.07 ポストDSLRという次世代のカメラ ~Blackmagic Cinema Cameraいよいよ登場 – PRONEWS
もう一点、 ファームウエアで改善されると思われますが、 現在F値が表示されません。外部モニターを接続し波形表示させる必要があります。(本体のビュアー上でVideo、Filmの見た目のLookは切り替えられますが、CinemaDNG時のSDI出力ではVideo Lookの表示はできません。)
デモ映像の撮影は所沢の日大芸術学部のキャンパスで行われ、実時間で5、6時間で撮影されました。雲や窓のシーンでは、13 Stopのダイナミックレンジが活かされ、さらにナイトシーンは午後8時過ぎに地明かりのみでノーライトで撮影されています。
ディザや偽色の違いが従来のDSLRと比較されました。机の部分のジャギーや緑の部分のディテールの違いです。
CinemaDNGによる撮影以外にも、ProResのFilmモードでコンパクトに撮影する事でレンジを活かし、シチュエーションに合わせた撮影スタイルが実現できます。
続いて大田氏が江夏氏とセッションをしながら、実際のグレーディングのデモを行います。先日のIBCで正式リリースされたDaVinci Resolve 9はBlackmagic Cinema Cameraに同梱されます。公式のインフォメーションにあるように数クリックでグレーディングの作業を開始でき、カラーコレクションがより身近になりました。DaVinci Resolve 9は以前のバージョンに比べ色のパラメーターの表示が大きくなっています。
CinemaDNGを使う利点はProResのFilmモードで撮影した状態と同じ様な見え方ですが、内部情報に12bitを維持している点です。撮ったままの状態だとローキーで色が無い状態なので心配になると思います。ですが、色の情報はグレーディングで戻ってきます。また、DaVinci Resolve 9ではカメラセッティングの調整がのカメラアイコンから可能で、露出や色温度を調整することができます。窓外の空の情報や手前の暗部のディテールが戻ってきたとき、また、雲の再現を実際に目にしたときに観客の間からは驚きの声が上がりました。
ハンディーシネカムとしての運用:アイラボラトリ 手塚氏
手塚氏がカメラ特性の観点から、低照度の撮影やRAWの破綻耐性についてレポートしています。そのリポートの中で面白い部分はコンパクトな筐体を最大限に利用した『旅シネカメラ』としての運用法です。
『旅シネカメラ』として使うには重量と記録時間、そしてバッテリーがネックになります。CinemaDNGで記録する場合、240GBのSSDでも20分程度の撮影しかできず、すぐに一杯になってしまうので、ProResで収録しトータルの収録時間を稼いでいます。問題になった部分はやはり重量です。はじめはバッテリーを含めリグで運用していたようですが、徐々にコンパクトな体制で撮影していくようになっていきます。さらにバッテリー対策はこまめに充電することで解決し、カメラを手持ちにするよりも一脚を添えてスチルカメラのように撮影する事で安定感を向上しています。
このことでわかる事は、Blackmagic Cinema Cameraの使用がシネマに限定されないことです。以前の16mmカメラやENGカメラのような使用感に近い形で運用できます。AlexaやREDの様に大掛かりな体制が必要なく、この価格帯でシネマルックが撮れるという事は大きな利点になるかもしれません。
その他会場ではステディーカムやMFT版のBlackmagic Cinema Cameraにマウントアダプタ(武蔵オプティカルの光学式マウント)を付け、FUJINONのB4マウントのレンズを装着していました。
OptMag(オプトマグ) – 武蔵オプティカルシステム
Cineroid EVF
Pomfort LiveGradeも展示されています。写真はPomfortのMamboFrameです。画面の部分はiPadで、中身はMovie☆Slateです。外枠のフレームのみ販売されています。
Pomfort – MamboFrame
Facebookグループでユーザーベースの交流が活発に行われています。Blackmagic Cinema Camera研究所として前述の手塚氏が運営する他、DaVinci Resolve 8の日本語マニュアル翻訳者の高信氏によるDaVinci Resolve Users Group Japan(DRUG-J)が開設されています。いずれも公開グループです。(Facebookのアカウントが必要です。)
Blackmagic Cinema Camera研究所
DaVinci Resolve User Group Japan (DRUG-J)
コメント
Adobeさんが、CinemaDNGから離脱したのが気になりますね〜。
まぁ実際にSpeed GradeでBMCCで撮影したCinemaDNGが読めないらしいですし、中々一般的なフォーマットにするのは難しいですね〜。
でも、楽しい時代なのは変わりません!!
最初にオープンにしたという功績は大きいですよねー。
私の場合、テクニカルな説明を「前のお二人がやりましたから」といって、一切しないという、超絶手抜きな発表でした(^^;
実際、撮影時には、ドイツの雲は真っ白で全く映って居らず、それどころか建物も真っ黒で「こりゃやばい。壇上で切腹か」と思っていたのですが、現像したら肉眼以上に風景が見えてきて、驚いたものです。
凄い威力ですよ。このカメラ。
あ、ちなみに本当に手を抜いたわけじゃ無いですからね(^^;
あくまでも、内容が被るので重複を避けただけです。
真に受けて文句を言った方がいたので、念のため。
わかります♪ 実際、全く違った目線からのアプローチだったので自分的には面白かったです。画角といい、ノイズ感といい凄く16mmチックなんですよねー。ドキュメンタリーとかピッタリだと思うんです。
そうなんですよ、ドキュメンタリー映画とかにかなり使えるなあと思いまして。
昨今のシネカメラでは無理な話ですし、ビデオカメラだと思うような質感のコントロールが得られませんし。
やはり「破綻しない」という安心感は大きいかと思います。
311のときのこのカメラがあったらな、と思わずにはいられませんでした。
そもそも、予算かけてスタッフ放り込んで後処理どっかーん!っていうのはあんなところに来るプロである以上、みんなもうできるでしょうし(^^;
例えば石河さんのような、明らかに自分より後処理が上手いであろう人に私のやり方を伝えるよりも、こういう、チープだけど高画質な使い方も普通に出来ましたよ、こんなバカな撮り方しても破綻しませんでしたよ、という方が面白いなあ、と。