Fairlightの新機能
Fairlightでは、アンビソニックス イマーシブ オーディオを完全にサポート。最新のオブジェクト追跡エンジンであるIntelliTrackを使いビデオを追跡してオーディオをパンニングする機能、Fairlight FXやAU、VSTプラグインでのサイドチェーンのサポート、「会話セパレーター」、「音楽リミキサー」、「ダッカー」など新しいトラック FX プラグインの追加の他、数多くの機能が搭載されています。
「会話セパレーター」では周囲の環境音を除去したり、「音楽リミキサー」でボーカルやドラムだけ消したり…「ダッカー」を使うと、煩雑なレベルコントロールの手順が減り、クリエイティブな作業に集中できます。
「周波数アナライザー」や「チャンネル EQ」 のリアルタイムアナライザーも新しくなり、変更内容がすぐに反映され、使いやすくなっています。さらに、トラックに録音する方法が簡単になり、自動的にシステムオーディオなどのデフォルト入力が反映されるようになっています。
そのほかにも細かいアップデートがいくつもあり、以前に増して操作性が大幅に向上しています。
DaVinci Resolve19の新機能 まとめ
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アンビソニックス (スタジオ版のみ)
Fairlight は、アンビソニックス イマーシブ オーディオを完全にサポートしました。アンビソニックスのトラックとバスはチャンネルベースとアンビソニック フォーマットの間で、すべてのパラメーターを処理しダイレクトに機能します。
ミキシング、メータリング、モニタリングなどが完全に アンビソニックに対応し、サードパーティ製のオーディオ エフェクト (チャンネルベースとアンビソニックス互換の両方) をアンビソニックのトラックとバスに追加できます。
これにより、既存のプロジェクトにもシームレスに導入することができるようになりました。
新しい3D パン ビューは上下、左右、奥行で操作でき、今までのチャンネル ベースのパンと簡単に切り替えできます。
アンビソニックスとは何ですか?
アンビソニックスは、水平面だけでなく上下も含めた、360度全方位のサウンドを表現できる全球イマーシブ サラウンド オーディオ フォーマットです。
ほとんどのマルチチャンネル サラウンド形式とは異なり、アンビソニックのチャンネルではスピーカー信号を伝送しません。代わりに、音場全体を表現することで、特定のスピーカー設定にデコードできます。
アンビソニックスは、音源の方向や距離を正確に再現するので、複数のスピーカー出力形式であっても単一のミキシングで済むという利点があります。最終的に音場のミックスを水平方向のみにしたり、標準的な5.1や7.1.4 などのサラウンド フォーマットだけでなく、テーマパークやインスタレーションで使われる大型のスピーカー アレイを含める場合など、適切なターゲット形式にデコードできます。
アンビソニックスはヘッドフォン用のバイノーラルを含む、様々なスピーカー出力に対応しており、その優れた空間音響再現能力によって、ゲームやバーチャルリアリティ (VR) 、拡張現実 (AR)などでも使われ、現代の3Dオーディオ技術の中核となっています。
DaVinci Resolve Fairlightでは、球面パンやアンビソニック バス、エフェクト プラグイン、アップ/ダウンミックスなど完全なアンビソニックの対応に加え、最大 5 次のHOA (高次アンビソニックス) の精度とヘッドフォンへのバイノーラルのデコードを実現しています。
アンビソニックス「オーダー」
アンビソニックスでは、音場を「次数」(オーダー)で示します。最も単純なのは 1 次で、4 つの個別のチャネルを使います。
アンビソニックのフィールドレコーディングでは、よくこの「1 次」が利用されています。特殊な四面体マイクを使用し、自然な球状の空間オーディオをキャプチャすると、驚くほどのリアリズムが得られます。
正確に位置を合わせたマイクが4つあり、出力信号は 4 チャンネルの「アダプティブ」コンテナとして録音されます。これらは、アンビソニック空間で柔軟に配置することができます。
アンビソニックスは、現状で7 次までをサポートしていますが、Fairlightでは36個の個別のチャネルを必要とする、最大5次のアンビソニックスをサポートしています。
高い次数で精度を高めると、より多くのオーディオ ストリームと処理能力が必要になります。16 チャネルを使用する 3 次を使用する場合でも、通常は優れた結果が得られます。
アンビソニックスで収録できるマイク機器
ZOOM H3-VR 360º Virtual Reality Audio Recorder
一番手軽にアンビソニックスを体感できるのは、ZOOM H3-VR 360º Virtual Reality Audio Recorderです。
低価格なうえ、マイクとレコーダーとが一体型なのも魅力的。アンビソニック、バイノーラル、ステレオの3種類の録音モードがあるのでアンビソニックだけでなく、普通に会議用のレコーダーとしても使えます。例えば議事録を作成する場合なども、DaVinci Resolveの文字起こしで楽々。USBオーディオインターフェース機能もあるので、PCにつなげれば単純にマイクとしてライブストリーミングにも使えます。
PC/Mac対応の無償ソフトウェア『ZOOM Ambisonics Player』で、アンビソニックファイルから通常のステレオやバイノーラル、5.1chサラウンドなどに変換して再生することができます。
RØDE NTSF1 アンビソニックマイク
RØDE NT-SF1は、放送音質の 360° サラウンドサウンドをキャプチャできるアンビソニックマイクロフォン。こちらはマイク単体。XLR4本で出力されるのでマルチトラックのレコーダーが必要です。
SENNHEISER AMBEO VR MIC VRマイクロフォン
老舗ゼンハイザーのVRマイクです。こちらもマイク単体でXLR出力です。
SOUND DEVICES MixPre-6 II オーディオレコーダー
上記2つは業務用なので、別途マルチトラックのレコーダーが必要です。ただし、普通のマルチトラックのレコーダーやミキサーだとバイノーラルで聞けません。SOUND DEVICESのマルチチャンネルオーディオレコーダーは有償ですが別途プラグインが用意されており、A-Formt、B-Format(FuMa、Ambix)で録音、再生可能で、バイノーラルでモニタリングできます。
Spatial Mic Dante
VOYAGE AUDIOのSpatial Mic Dante。こちらは8つのカプセルを持つ2次のマイクロフォンです。Dante™オーディオネットワークに対応したオーディオ機器で、標準的なIPネットワークを利用しイーサネットケーブル1本で高品質な非圧縮オーディオをほぼゼロのレイテンシーで伝送します。スタジオレコーディング向きです。
Fairlightでのアンビソニックスの有効化
まず、「環境設定」を開き、「ビデオ&オーディオ入出力」> 「イマーシブオーディオ」を選択して「Ambisonicsを有効化」にチェックを入れます。
アンビソニックス ミックスのセットアップ
では、セットアップを始めてみましょう。
初めにアンビソニックを、どの「次数」で作業するかを決定します。「次数」が高いほど正確な位置決めを行うことができます。現在Fairlightでは最大5 次まで利用できますが、1つのチャンネル数が多くなるため、3次を利用することも良い選択肢のひとつです。
何もない状態から始めるには、まず「メディアプール」で「新規タイムライン」を作成します。(そのままステレオで作成します)
自動的に「A1」と「バス1」が作成されます。
まず、バスのフォーマットをアンビソニックのトラックに変更します。
Fairlightメニューの「バスのフォーマット」でフォーマットを「Stereo」からアンビソニックスに変更します。「Ambisonics」の任意の「次数」を選択します。これで、「バス1」がアンビソニックのトラックになります。
Fairlightメニューの「イマーシブオーディオ」>「Ambisonicsチャンネルメーター」をオンにすると、メーターに複数のチャンネルを表示できます。バスのフォーマットを「5次」(Ambisonics 5th Oder)に設定している場合には、メーターに36個のチャンネルが同時に表示されます。
次に、メディアプールからステレオ音源のオーディオファイルか、ステレオ音声のムービーファイルを読み込み「A1」に配置してみましょう。
この状態で「A1」に配置したオーディオは「バス1」に自動的に送られますが、モニタリング環境は「ステレオ」のままです。
上部の「スピーカー出力レベルコントロール」の横の「モニター」ドロップダウンメニューで、デコードフォーマットを選択します。「Binaural」を選択し、ヘッドホンをして再生します。これで、ヘッドホンで聞く音が「バイノーラル」の状態で再生されます。
ミキサーパネルにある「A1」のパンをダブルクリックして、球体や3Dでパンのパラメータを操作してみてください。空間の中でパンしているのがわかると思います。2D、3D、球体パンはいずれも再生中に自由にきりかえることができます。3Dの球面パンを使用することでソースを空間の任意の場所に配置できます。
パンした情報を書き出すには、オートメーションを使って記録する必要があります。
アンビソニックス ミックスのセットアップはこれだけ。
必要に応じ、エフェクトのセンドやリターンを作成したり、モノラル、ステレオ、マルチチャンネルをアンビソニック空間に配置します。通常のモノラルやステレオソースをサウンド フィールドに自由に配置でき、さらに、 アンビソニックスネイティブのダイナミクス、EQ、リバーブなどのプラグインも使用できます。
ダイナミクス プロセッサーを含むチャンネル ダイナミクスや EQ、マルチバンド コンプレッサー、リミッター、リバーブなど、ほとんどの Fairlight エフェクトはアンビソニックにネイティブで対応しています。AU や VSTなど互換性のあるサードパーティのアンビソニック エフェクトも、アンビソニックのトラックやバスに対して自由に使用できます。
アンビソニックバスを、異なる次数の他のアンビソニックバスに割り当てることもできます。 必要なアップ・ダウンミキシングはすべてFairlight エンジンと FlexBus によって自動的に処理されます。
同じタイムラインの中で、アンビソニックとチャンネルベースのミックスを自由に作成でき、異なるフォーマットの複数の出力を同時にレンダリングすることもできるので、柔軟性が飛躍的に向上しています。
アンビソニックファイルのサポート
WAV、BWAV、または .caf (1OA AMBやAmbiX 形式を含む) のアンビソニック ファイルの入力がサポートされており、メディア プールからファイルをタイムラインに配置すると、ファイルに応じてストリームの順序や数に合った適切なトラック タイプを作成します。
アンビソニックスのメータリング
一般的なチャンネルミキシングと異なり、アンビソニックスでは特定のスピーカー位置やレベルと相関関係がありません。アンビソニックを計測する場合、何が起こっているかを判断するのに別の手段で視覚化する必要があります。、単一のチャンネルメーターで全体の強さ(レベル)を確認し、ソースの音源が球状空間のどこに位置するかを示す「ヒートマップ」を表示します。
Fairlight のアンビソニックは、ミキサー、トラック ヘッダー、メーター パネルで、単一または複数の一般的なバーグラフで表示されます。
「Fairlight」メニュー > 「イマーシブオーディオ」 > 「Ambisonicsチャンネルメーター」で単一から複合表示に切り替えできます。
また、「Fairlight FX アンビソニック メーター」を使うと、音場をグラフィックで表現できます。この「Fairlight FX アンビソニック メーター」はミキサー チャンネルに対してFairlight FX効果を与えることで表示します。
ミキサー チャンネルの「エフェクト」ドロップダウンメニューから「Metering」>「Ambisonics Meter」を選択するか、エフェクトパネルの「Fairlight FX」項目にある「Ambisonics Meter」をミキサー チャンネルのアンビソニック トラックやバスの「エフェクト」部分にドラッグアンドドロップします。
ドラッグアンドドロップする際は、必ず「エフェクト」部分にドロップしてください。ほかの場所にドロップすると誤作動の原因になります。
さらに、ビデオビューアにオーバーレイでヒートマップを表示する、アンビソニックス メーターも搭載されています。ビュアーのオプションで「360 ビューア マッピング」を選択すると「Ambisonics Meter」が表示され、オン/オフを切り替えたりオプションを選べます。
もうひとつの「空間ビュースコープ」は「Fairlight」メニュー > 「イマーシブオーディオ」 > 「空間ビュースコープ」からアクセスします。左下隅にある「Ambisonics メーター」のチェックボックスをオンにすると、タイムラインに 1 つ以上の高次アンビソニックス ソースがある場合、さまざまな投影ビューを選択できます。これは、スクリーンに対して音の位置を決めるときに最適です。
出力ファイルのレンダリング
アンビソニック形式のミックス出力ファイルは「デリバー」ページからレンダリングできます。アンビソニック ファイルは、出力のアンビソニック順序 (1OA、2OA など) によって決定されるストリーム数を持つマルチチャネル適応コンテナーです。また、希望のスピーカー出力構成 (7.1.4 など) に合わせてアップまたはダウンミックスされた出力ファイルをレンダリングすることもできます。
詳細なコントロールにはやはり、専用のデバイスが必需品。複数のトラックフェーダーはモーターフェーダーなのでオートメーションで動きます!光るボタンは暗いスタジオ作業でも視認性が高く、多数のパラメーターを感覚で操作できます。小さめのスタジオ、CM、オンラインコンテンツ、インディーズの制作などに最適です。ジョグがついているのも大きなポイント!
Fairlightの機材の多くはモジュール形式で規模に合わせて追加でき、レコーディングやミキシングスタジオ用に設計されています。コンパクな環境でミキシングをするなら、Fairlight Desktop Consoleはオススメです。
ビデオを追跡してオーディオをパンニング (スタジオ版のみ)
Fairlight ビューアで人やオブジェクトを自動的に追跡し、その動きと一致するパンのオートメーション データを生成できるようになりました。これは、最新のオブジェクト追跡エンジンであるIntelliTrackを使った技術で、時間と労力が節約されて創造性が大幅に加速されます。
まず、 「オートメーションの切り替え」スイッチを有効にします。
ビューアの左下にあるメニューから「トラッカーコントロールを表示」を選択し、「Auto」 ボタンを有効にして、自動化するパン コントロールを選択します。
「Left-Right」(左右)や「Down-UP」(上下)など有効にする方向を選択し、トラッキングするポイントにターゲットを移動します。ビューアのメニューで「トラッカー座標を表示」すると正確な位置がわかります。
タイムラインで追跡したい選択範囲を設定します。
「Auto」の隣にある「トラック」ボタンを押して追跡を開始します。
この時にトラックが選択されていなかったり、選択範囲がないと、トラッキングできません。
トラックヘッダーのオートメーション表示セレクターで書き込みしたパンデータのパラメーターを表示します。このデータは、他のオートメーション カーブと同様に編集することができます。
うまく追跡できなかった場合は、タイムラインで範囲を指定してトラッカー オブジェクトを移動し追跡をやり直すことができます。
現在、X-Y-Z 位置の同時自動追跡はサポートされていません。また、同じトラッカー オブジェクトで距離 (前後) を同時に追跡することはできません。
「Auto」を選択せずに手動でオブジェクトを追跡することもできます。 このモードではトラッカーが単純な十字線に変わります。
手動でトラッキングを行うには、自動追跡と同様に「オートメーションの切り替え」スイッチを有効にします。
オートメーション表示セレクターでパンデータのパラメーターを表示し、タイムラインを選択して範囲を設定します。
現在の位置にキーフレームを設定するには、Option/Alt を押しながらトラッカーオブジェクトをクリックします。タイムラインの別の場所に移動し、同様にOption/Alt を押しながらトラッカーオブジェクトをクリックします。2つのキーフレームの間は自動的に補完されます。
「境界キーフレーム」を作成するには、option/Alt キー+Shift キーを押しながら位置をクリックします。
オーディオエフェクトのサイドチェイン
このバージョンアップでは、対応する Fairlight FXおよび、AUやVSTプラグインでサイドチェーンをサポートするようになりました。
サイドチェーンとは何ですか?
サイドチェーン(Sidechain)とは、あるオーディオ信号(主に音量)に基づき、別のオーディオ信号を制御する技術のことを指します。特にダイナミクスプロセッサ(コンプレッサーやゲートなど)でよく使われれます。
一般的に、サイドチェーンに入力されたオーディオ信号を引き金(トリガー)として、この信号に基づき、メインのオーディオ信号に対して圧縮、増幅、減衰などの処理が行われます。
例としては、セリフのタイミングで背景音に効果をかけたり、音楽のレベルを抑制したりコンプレッサーの量を変えたりする場合などです。クリエイティブな効果を得るために、他のプラグインと併用することもできます。
サイドチェーンコントロール
Fairlightでは「チャンネル ダイナミクス プロセッサー」とFairlight FX 「リミッター」 プラグインは外部サイドチェインをサポートしています。サイド チェーンのコントローラはダイナミクス プロセッサーの場合、コンプレッサー部分の右下、リミッタープラグインは右上にあります。
AUやVSTでは、ウィンドウの上部にサイドチェーン コントロールが配置されます。
サイドチェーンを使用するには、「ソース」のドロップダウンメニューからサイドチェーンのソースを選択します。ソースには任意のトラックやバスを選択でき、バスを使用する時は、複数のソース信号をもとに一度にプラグインを制御できます。
「オン」ボタンをクリックして、入力信号を有効化します。
これで、外部の信号を使いプラグインのコントロールを調整できます。
入力したソース信号をそのまま聞きたい場合は、「聴く」(Listen)ボタンを使うと、サイドチェーンに入力の信号が正しいかどうかを確認できます。確認が終わったら「聴く」(Listen)ボタンは必ずオフにしてください。そうしないと、トラックで正しい音が聞こえなくなります。
新しいトラックFXプラグイン
「会話セパレーター」(ダイアログセパレーター:Dialogue Separator)、「音楽リミキサー」(ミュージックリミキサー:Music Remixer)、「ダッカー」(ダッカー:Ducker)は、処理バッファーを備えた新しいトラック FX プラグインです。
これらはミキサーの TrackFXセクションにある「音声分離」(ボイスアイソレーション)と「会話レベラー」(ダイアログレベラー)の後に挿入されています。
インターフェイスが煩雑になるのを避けるためこれらのプラグインは、デフォルトでは表示されていません。他のトラック FX を表示するには、ミキサーパネルの右側にあるオプションメニューから「Visible Track FX」で表示するプラグインを選択します。
会話セパレーター(ダイアログセパレーター)
「会話セパレーター」は、DaVinci Neural EngineのAI を使用して、「ボイス」(会話)、「バックグラウンド」(背景音)、および「アンビエンス」(環境音:反響している音場や周囲の部屋の音)のレベルを個別に制御できます。
例えば、広々とした場所で収録し、背景に音楽や群衆の騒音が含まれる場合は「バックグラウンド」が少し低くなるように調整したり、明瞭度を高めるため「アンビエンス」を下げたりして調整します。
「会話セパレーター」は、現在モノラルのみに対応しています。ソースがステレオの場合はデュアル モノラルに分割し、2 つのモノラル トラックを別々に処理することになります。
音楽リミキサー(ミュージックリミキサー)(スタジオ版のみ)
「音楽リミキサー」は、DaVinci Neural Engine AI ベースのエフェクトです。このプラグインは AI を使用して、音楽を個別の基本ステム(ボイス、ドラム、ベース、ギター、その他)に分割します。
レベルコントロールでソースのバランスを再調整してリミックスしたり、ミュートボタンで即座に変更を加えたり、ミックスからパートを抜き出すといったことができます。これらの操作はオートメーションで記録することができ、変更可能です。
ダッカー
「ダッカー」(Ducker)とは、オーディオ処理において、あるオーディオ信号のレベルが外部ソース信号を使用して自動的に下げるプロセスを指します。この技術はラジオ放送やライブイベント、ポッドキャスト、映像制作などで広く使われ、ナレーションやアナウンスが入るときに、背景の音楽や効果音の音量を自動的に下げたりするときに用います。
ダッカーを使うと、煩雑なレベルコントロールの手順を減らし、クリエイティブな作業に集中できます。
ダッカーの操作
ダッカーを使用するには、影響を与えたいターゲットトラック (宛先となるトラック) を選択し、TrackFXからダッカーを開きます。
ドロップダウン メニューでソーストラックまたはバスを選択します。バスを使うと複数のソースをまとめてトリガーとして使用できます。シーケンスを再生し、 レベルやその他のコントロールを調整します。
- Duck レベル: ターゲットトラックのレベル低下量を dB 単位で示します。デフォルトは 2.7 dB です。ほとんどの場合、この量は 2 ~ 5 dB の間で最適に機能します。
- 先読み:先読み時間(ミリ秒単位)を制御します。デフォルトは 15 ミリ秒です。先読みすることで、ソース トラックが聞こえる前にトラックのレベルを下げ始めることができます。通常はデフォルトで良好な結果が得られます。
- 立ち上がり時間:指定されたDuck レベルに達するまでにかかる時間(ミリ秒単位)で、デフォルトは 10 ミリ秒です。 ほとんどの場合、この値で問題ありませんが、Duck レベルが高くソースとのギャップが大きい場合、より長い値が必要な場合があります。
- ホールド:リカバリーに移る前に、Duck レベルで設定された値を保持する時間(ミリ秒単位)で、 デフォルトは 150 ミリ秒です。
- リカバリー:Duck レベルで設定した値から元の状態まで回復するのにかかる時間(ミリ秒単位)で、デフォルトは 750 ミリ秒です。
ソース素材を試して、最良の結果を見つけてください。
グラフに、ダッカーの動きに対するレベルの変化がの黄色い波形で表示されます。
Fairlight FXの改善
「音声分離」のアップデート
「音声分離」は、幅広い種類のソース信号でより適切に機能し、ステレオのパフォーマンスを向上させ、バッファリング機能の応答性が改善されています。
「会話レベラー」の改善
「会話レベラー」が改善され、キューアップ時間が短縮されました。
周波数アナライザープラグインのアップデート
Fairlight FX プラグインの「周波数アナライザー」(Frequency Analyzer)は、チャンネル EQ の新しい RTA(リアルタイムアナライザー)の表示に合わせ、パラメーターの変更を反映するスペクトル グラフに改良されました。
また「スペクトル」と「ウォーターフォール」オプションを切り替えるスイッチがグラフの下に追加され、ウォーターフォール表示の全般的な改善も行われています。
トラックEQの改善
トラック EQ は、ハイパス フィルターとローパス フィルターで選択可能なスロープ フィルター (最大 24dB/オクターブ) をサポートしました。6、12,18、24の4段階でスロープの滑らかさを1ボタンで調整できます。
EQ ディスプレイには、パラメーターの変更を即座にプレビューできる 周波数スペクトルで表示されます。
Fairlight のその他の新機能
オートメーションの改善
いくつかのオートメーションの機能が改善されています。
すべてのトラックのオートメーションをクリア
トラック内のすべてのオートメーションをクリアできるようになりました。 トラックヘッダーを選択して右クリックし、「トラックのオートメーションを削除」(Clear Track Automation)を選択すると、オートメーションをクリアするかを尋ねるダイアログ ボックスが表示されます。
すべてをリセットするか、現状の値を維持してオートメションのみクリアするか選択できます。
その他のオートメーションの改善
- プラグインとそのパラメータが、挿入された順と同じ順序でオートメーション メニューにリストされます。
- 新しいトラック ヘッダー ツール チップで、どのスロットのどのパラメーターが表示しているかの情報を得られます。
- アンカー、初期キーフレーム処理、バイステート レベル制御キーフレームなどでキーフレーム処理が大幅に改善されました。
先頭/末尾にスナップ
フォーカス モードで手のひらツールを使用して、トラックの下部を使いクリップの先頭や末尾を再生ヘッドにスナップできるようになりました。これにより、イベント をすばやく並べることができます。
先頭/末尾にスナップする場合:
- 一度にスナップできるクリップは 1 つだけです。
- クリップは独自のトラック内でのみスナップできます。
- 範囲/クリップ選択 (先頭) はスナップ ターゲットとしてカウントされます。
- スナップされたクリップは、ターゲット(またはレイヤード モードの最上位レイヤー) のクリップを上書きします。
- オートメーションの「編集と合わせて移動」はスナップで機能します。
注: スナップ ターゲットの場所が画面外にある場合でも、スナップは機能します。
先頭にスナップする場合:
- フォーカス モードになっていることを確認し、スナップしたい場所に再生ヘッドを置きます。
- Command(Ctrl)+Option(Alt)を押したまま、スナップしたいクリップをクリックします。
- クリップの先頭が再生ヘッドにスナップします。
尾部にスナップする場合:
- フォーカス モードになっていることを確認し、スナップしたい場所に再生ヘッドを置きます。
- Command(Ctrl)+Option(Alt)+Control(Win)を押したまま、スナップしたいクリップをクリックします。
- クリップの末尾が再生ヘッドにスナップされます。
単独ソロモード
Fairlight メニューの「単独ソロ」をオンにすると、一度に 1 つのアイテムだけがソロになります。別のトラックをソロにすると、それ以外のトラックのソロは解除されます。これは、2 つ以上のトラックの間の処理を比較する場合に役立ちます。
グループパンニング
トラック グループでのパンをサポートするようになりました。グループのパンニングを有効にするには、グループ設定ダイアログの「パンニング」チェックボックスをオンにします。
ミキサーパネルで操作する場合、グループメンバーのパンニングモードが同じ場合のみ動きます。
スマートズーム
スマートズーム(Smart Zoom)を使うと、1 回の操作で選択した範囲やトラックに応じてタイムライン全体を拡大し、トラックの高さを拡げ、選択範囲全体を画面の中央に配置します。同じコマンドを使うと元の状態に戻ります。選択した内容を「ズームイン/アウト」する虫眼鏡のような機能です。
スマート ズームはデフォルトでCommand(Ctrl)+ Option(Alt)+ E にマップされますが、反映されていなかったり、変更したい場合は、「キーボードのカスタマイズ」で再マップできます。
LTC と MTC チェイス同期
オーディオ インターフェイスの任意のオーディオ入力から LTC 経由やMIDI タイム コード (MTC) 経由でタイムコードをトラックおよび同期できるようになりました。これは、Fairlight メニュー>「リモート コントロール設定」で設定可能です。
現時点では動作せず、ベータ中に対応予定です。
レコードアームの自動入力パッチ
トラックに録音する方法が簡単になりました。録音用にトラックを設定すると、自動的にオーディオ インターフェイスのデフォルト入力が反映されるようになります。
「環境設定」>「ビデオ&オーディオ入出力」パネルの「オーディオ入出力」の設定が反映されます。特定のI/O機器がなかったり、システムのオーディオを使用している場合、コンピュータのシステム設定で変更した入出力がそのまま反映されます。macOS のデフォルトの入力はシステム環境設定によって設定できます。
煩雑な設定をする必要なく、数回のクリックですぐに録音できるようになります。
その他のアップデート
AU プラグインの動的遅延補償(Dynamic Delay Compensation)のサポート
AU プラグインに異なるプロセスディレイの値があり、それが変更された場合、Fairlight はディレイ補正を適切に更新します。
Fairlight コンソールのループ動作のアップデート
Fairlight コンソールでPlay Around/To コマンドを使用する必要がなくなり、ループ アイコンのステータスに従います。
サードパーティ製のオートコンフォームワークフローのサポート
一部のサードパーティ製オートコンフォームアプリケーションと連携するようになり、データのラウンドトリップと再コンフォームがシームレスに行われるようになりました。
Dolby Atmos Composition Fadeのサポート (スタジオ版のみ)
タイムライン上にクリップとして配置して編集される Dolby Atmos マスター ファイル上で基本的なフェードが作成できるようになりました。ただし、複雑なフェードとバッチ フェードはサポートされていません。
Sony 360RA Walkmixオーディオ形式とプラグインのサポート(スタジオ版のみ)
Sony 360RA Walkmixのオーディオ形式とプラグインがサポートされました。
MPEG-H SDK 2.75 による ADM と Vivid Audio の改善(スタジオ版のみ)
MPEG-H SDK 2.75 により ADM と Vivid Audio が改善しています。