NewTek NDI ツール 3.6がリリースされました。
3.5と比べあまり変わった点はありませんが、安定度は増した気がします。また、いくつかのツールがMacから利用できるようになっています。
そこで、ちょっと使い方などをまとめてみました。
NDIって何?
NDI (ネットワークデバイスインターフェイス) は、NewTek社によって開発された、ライブビデオをネットワーク上で配信するためのIPビデオプロトコルです。イーサネットなどのローカルエリアネットワーク環境で放送品質のビデオを送受信することができるようになります。
ロイヤリティフリーのライセンスのため誰でも設計開発することができ、OSを問わずモバイルや組み込み型のシステムにも利用されています。元々はビデオスイッチャー(TriCaster)の入出力の映像信号をSDIケーブルを使わずにネットワーク上で通信するために設計されました。
SDKを提供することで様々なアプリケーションから利用できるようになり、現在ではその利用範囲は単にライブ配信にとどまらず、大きく広がっています。
NDIで何ができるの?
NDIの動作はNewTek社が提供しているNDI Toolsをインストールすることで確認できます。使用法もそれほど難しくないので、気になった方はダウンロードしてインストールしてみてください。
NDI ToolsはWindowsおよびMacで利用可能です。
Windows用NDIツール
Windows用のNDIツールには以下のツールが含まれます。
- NDI Studio Monitor
- NDIスキャンコンバーター
- NDI Virtual Input
- NDI VLCプラグイン
- Adobe Creative Cloud用NDI
- NDIアクセスマネージャー
- NDIテストパターン
- NDI|HX Driver
ツールのダウンロードには必要な情報を記入し登録する必要があります。
インストールが完了したら、まず「NDI Studio Monitor」を起動してみましょう。
Windowsのスタートメニューのアプリケーションリストから「NewTek NDI Tools」を探し、「NDI Studio Monitor」を選択します。
「NDI Studio Monitor」
NDI Studio MonitorはNDIビデオソースを表示し、現在利用できるNDIチャンネルをモニターで確認することができます。
ウィンドウ上にマウスを置くと、両側に2つのコントロールアイコンが表示されます。
左側はビデオソースと設定メニューを開くアイコン、右側のボタンはフルスクリーン表示の切り替えです。
ネットワーク上にNDIソースがない場合はNDIツールの他のアプリケーションを実行し、ビデオソースを追加できます。
例えば、「NDI Test Patterns」を起動すると、マシン名の隣に「Test Patterns」が表示され、ビデオソースとしてテストパターンを選択できるようになります。
ローカルネットワーク上に利用可能な他のマシンのNDIソースがある場合は、別のマシン名が表示されます。これは同一サブネット内での機器の検索にBonjour(mDNS)のような技術が使用されているためで、特にネットワークの設定を意識することなく簡単に利用できます。
はじめに表示されるIPアドレスをウェブブラウザーに入力したり、QRコードをモバイルデバイスで読み取ると、ローカルネットワークエリア内の別の機器から管理画面にアクセスしてリモートでスタジオモニターを操作できます。
NDIの送信元が対応していれば、スタジオモニターを使いカメラをコントロールをしたり、録画のトリガーを送信することもできます。
「NDI Test Patterns」
NDI Test Patternsには多くの種類のテストパターンとオーディオトーンが含まれます。ネットワーク上の他のNDI機器に基準信号を送信し、接続をチェックするために使用します。
任意の静止画イメージを追加することもできます。
「NDI Scan Converter」
NDI Scan Converterは、使用しているPCの全画面もしくは一部分を切り取りビデオソースとして使用できます。
例えば、全画面のゲームやアプリケーションの操作画面を、ビデオアウトプットやキャプチャデバイスを使わずに別の配信用のマシンに送信できます。
Scan Converterの設定はタスクトレイのアイコンを右クリックすると表示されます。
「NDI Virtual Input」
NDI Virtual Input を使用する事で、Googleハングアウト、GoToMeeting、Skype、ズームなどウェブカメラをサポートする一般的なソフトウェアでNDIビデオソースを指定できます。
Virtual Inputの設定もタスクトレイのアイコンを右クリックすると表示されます。(すでにあるNDIソースしか選択できません。)
NDIソースは標準のMicrosoft Windows ビデオとオーディオソースとして認識されます。
「NDI VLCプラグイン」
VLCは多くのビデオフォーマットを再生できるメディアプレーヤーです。
再生しているムービーがリアルタイムにNDIへエンコードされビデオソースとして利用できるようになります。複数起動したVLCプレイヤーのインスタンスをサポートし、それぞれの出力をNDIに変換できます。
VLCの出力をNDIに変換するには:
VLCの [ツール]メニューの[設定]を選択します。
オーディオ設定で出力モジュールの選択リストをドロップダウンし、「NewTek NDI audio output」 を選択します。
ビデオ設定で、[出力]オプションリストをドロップダウンし、「NewTek NDI video output」を選択します。
選択が完了したら、[保存]ボタンをクリックし設定を保存します。
「Adobe Creative Cloud用NDI」
Adobe Premiere Pro CCやAdobe After Effects CCなどAdobe Creative Cloudパッケージソフトのモニター出力をNDIに直接変換します。使い方は簡単でPremiere Proの場合、[環境設定] の [再生] から「Newtek NDI output」を選択するだけです。
オーディオとアルファチャンネル(透過)をサポートし、タイムラインのプレビューをリアルタイムに送信したり、ビデオミックスの素材として使用できるようになります。
「NDIアクセスマネージャー」
NDIで送信されているビデオソースは受信可能な状態であれば、どのマシンからでもアクセスできるように設計されています。
NDIアクセスマネージャー ではNDIチャンネルをグループ分けし管理し、公開または非公開に構成することができます。
また、IPアドレスを指定し(通常は見えない)別のネットワークのNDIチャンネルに接続しアクセスすることもできます。
「NDI|HX ドライバー」
NDI toolsで自動的にインストールされるNDI|HX ドライバーは、NDIをサポートするリモートカメラを(イーサネットやWifiなどの)ネットワークに接続するだけで簡単に利用できるようにするためのドライバーです。
接続されたカメラはNDIのソースとして認識され、PTZ(パン-チルト-ズーム)リモートコントロールやタリー操作などができるようになります。
Mac用NDIツール
Mac用のNDIツールはWindows版と比較して若干機能が少ないですが、必要な機能はサポートされています。
Newtekと共同で開発しているSiennaがいくつかのアプリケーションをMac App Storeで提供しています。
Sienna NDI Software Applications and Infrastructure
Mac用のNDIツールには以下のツールが含まれます。
- NDIビデオモニター
- NDIスキャンコンバーター
- Adobe Creative Cloud用NDI
- Access Manager
ツールの概要はWindows版と同じです。
その他のNewtek製アプリケーション
開発元のNewtekではNDIソースや他の外部ソースを録画するための「IsoCorder Pro」やテロップを作成するための「LiveText」を販売しています。
無償のIsoCorderは2chまでのNDIソースの録画が可能です。
どんな機器が接続できるの?
開発元のNewTek社のビデオスイッチャー(TriCaster)は入出力でNDIに対応していますが、NDIを扱う場合、必ずしもこのハードウェアが必要なわけではありません。
まずはカメラから。
NDIをサポートしているPTZ(パン/チルト/ズーム)カメラがいくつかリリースされています。
PTZカメラとは
パン/チルト/ズームを電動でリモート制御できるカメラのことです。カメラが固定で据え置きの場合と異なり、アングルを自由に操作したり、対象をフォローすることができます。
今までのリモートカメラは電源、映像ケーブル、リモートケーブルがそれぞれ別々に必要でした。NDIを使用ことでイーサネットケーブル1本(電源はPoE対応機器が必要)で配信が可能になります。
他にもカメラでリモート操作するシステムは様々ありますが、各社ごとにコントローラが異なります。
NDIをワイヤレスで送信する
NDIをワイヤレスで送信できるNewTek Connect Sparkがあります。
NewTek Connect SparkはSDI(3G)用とHDMI用があり、カメラのSDI/HDMI出力信号を受け取り、直接NDIに変換するポータブルなIPビデオエンコーダです。
イーサネットまたはWiFi経由でネットワークに接続すると、直ぐにNDIソースとして使用できるだけでなく、SDカードまたはUSBストレージメディアにライブ録画できる機能やタリー機能も装備しています。
SDI、HDMIをNDIに変換する
BirdDog StudioはSDI(3G)入力、HDMI入力とSDI/HDMI出力があり、クロスコンバージョン機能を持つハードウェアベースのNDIエンコーダーです。
BirdDog MiniはHDMI入出力だけですが、最小のハードウェアベースのNDIエンコーダーです。
まもなく発売されるConnect Spark Proは4Kに対応し、Gigabitイーサネット(有線)の接続でフルバンド幅のNDI出力が行えます。
iPhoneやAndroidのカメラ出力をNDIに変換
App StoreやGooglePlayでアプリケーションが販売されています。
Newtek純正の「NewTek NDI Camera」はAndroid携帯電話やタブレット、 iPhoneやiPadなどのカメラの映像出力をNDIソースとして使用できるようになります。
iPhone、iPadアプリ(App Store)
Androidアプリ(GooglePlay)
NewTek NDI
カテゴリ: 写真
価格: ¥2,040
注:2018/5/24時点の価格です。価格は変動する可能性があります。
今 NDIは、ゲームやVJ関係が熱い!
Unreal Engine 4がアプリケーションレベルでNDIに対応するアナウンスがあったり、FFmpeg 3.4でNDIのI/Oが追加されたり、VJソフトウェアのVDMXやResolume、Kraken2などがNDIをサポートしたりとNDI関連の動きが活発です。
ストリーミング用アプリケーション
ライブ配信と一番相性が良いのはストリーミング用のビデオミキサーアプリケーションです。
専用のハードウェアのVミキサー、スイッチャーと比べ機能は少ないですが、汎用性が高くストリーミングサービスに直ぐにアクセスできるため、小規模なライブプロダクションや個人での配信に最も使われています。
ストリーミング用のアプリケーションは、vMIX、OBS(Open Broadcaster Software)、Wirecast、XSplit などがNDIに対応しています。
OBSはプラグインをインストールすることでNDIを利用できます。
obs-ndi – NewTek NDI™ integration into OBS Studio 4.5.1
近年ゲーム実況配信やeSports、Vtuberなどゲーム関係の配信がちょっとしたブームになっています。
例えば、全画面で動作しているゲーム画面をキャプチャーし、Webカメラの映像を合成し、テロップをオーバーレイして配信する場合など結構大変だったりします。
複数の入力を配置したり、外部の入力を増やす場合には、入出力のキャプチャカードを増やしたりケーブルが必要になりることも多く、ゲームマシンではマシンに負荷がかかるため、配信や録画までを1台で済ますことは非常に困難です。
NDIを使用すると、ゲームマシンと配信用マシンを簡単に分けることができます。
また、ほとんどの配信ソフトでは入力ソースだけでなく、アウトプットをNDIとして出力する機能も持つため、他のPCでレコーディングをしたり、入力ソースとしてアウトプットを再利用することもできます。
ゲーム制作用アプリケーション
Unreal Engine やUnityなどのゲーム制作用アプリケーションがNDIに対応することで、ゲーム制作過程においてライブソースをテクスチャーとして利用したり、ビューポートをNDIソースとして出力できるようになります。
UnityでのNDIは、keijiro氏のKlakNDIプラグインで動作します。
VJソフトウェア
VJソフトウェアやTouchDesignerのようなビジュアルアートプログラムのNDI対応が急速に増えています。
一般的にVJでは内部のソースやジェネレートされた素材をミックスします。
NDIを使用すると外部カメラや別のマシンのソースを簡単に利用できるため、コラボレーションプレイやカメラソースを使ったプレイなどで表現の幅が広がります。(アプリケーションが対応していれば、SyphonやSpoutの併用も可能です。)
また、ビジュアルアートプログラムではライブカメラやPC画面キャプチャの映像が簡単に組み込め、それらをソースにしてインタラクティブな作品を仕上げることができます。
編集ソフトウェア
NDI ToolsにはAdobe Creative Cloud用のプラグインが同梱されていますが、AVID Media ComposerではアプリケーションレベルでNDIがサポートされています。
最近、レビュー承認ツールがブームの兆しですが、制作のスピードをアップするには、この「レビューと承認」のプロセスが重要です。
タイムラインのプレイバックがそのままNDIとして出力されるため、ムービー化して配布する必要がなく、Skypeやその他のミーティングツール、ストリーミングサービスを使用する事で遠隔地であっても大勢がレビューに参加できるようになります。
ちなみに、AVIDではSpeedHQコーデックをインストールする事でTriCaster用のムービーを作成できます。(FFmpeg V3.3からSpeedHQコーデックがサポートされています。)
SpeedHQコーデックはNewtekの 製品アップデートダウンロードのコーデックとユーティリティからダウンロードできます。
ライブビデオタイトル
Newtek 「LiveText」やNIXUS 「TELOPBOX」、NewBlueFX 「Titler Live3 Broadcast」などがNDIに対応しています。NDIではアルファチャンネルでのオーバーレイもサポートされ、キー付きの信号を送信できます。
NDIの可能性は無限大
元々はライブ配信のためのプロトコルが、誰でも利用出来ることになり利用の幅が大きく広がりました。(というか…現在も加速中です!)
Newtek太っ腹というか、やっぱり中規模以上の配信になると本格的なスイッチャーが必要になるので…TriCasterを使ってねと言うことなのかな?
これらのソースを使えるだけでも十分魅力的な上、TriCasterは他のスイッチャーに比べ使い方も簡単に出来ているのでNewtekのサイトでぜひ確認してみてください。
使い方は貴方次第です!
撮影助手→ポストプロダクションスタジオを経て、2000年からフリーランス。CM、PV、TVグラフィックなどAutodesk Flame Smokeによる映像合成編集。合成作業、特殊効果など撮影技術に関してのサポート、システム構築に関するアドバイスなども行っています。
ご依頼、ご質問などございましたらお問い合わせフォームまで。
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