デジタルコンテンツ白書2014発刊セミナーリポート

城西国際大学(学校法人城西大学内)東京紀尾井町キャンパス 『3号館』B1多目的スタジオで開催された、一般財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)主催のデジタルコンテンツ白書2014発刊セミナーにいってきました。
デジタルコンテンツ白書2014発刊セミナー

2013年のデジタルコンテンツ産業の市場規模

2013年のデジタルコンテンツ産業の市場規模が報告され、日本国内での全てのコンテンツの売り上げの合計が11兆9094億円。それを静止画/テキスト、動画、ゲーム、音楽/音声と4つのコンテンツの区分にわけ、さらにメディア別として、パッケージ、放送、ネットワーク、劇場専用スペースに分類し統計しています。景気の浮き沈みに影響されますが、総計では10年間はほぼ横ばい。静止画/テキストおよび動画が圧倒的に多く、次いでゲーム、音楽/音声になっています。
市場規模で見るとパッケージが減りネットワークが増えている傾向にあるようです。市場のトップ10ではテレビ(民放)、新聞、雑誌、書籍はまだまだ強く、インターネット広告が5位につけ、6位はなんとオンラインゲーム/運営サービス、昨年は圏外からのランクインです。前年比100億円以上の増加額で見ても、オンラインゲーム/運営サービスは2,931億円とそれに次ぐインターネット広告の574億円に大きく差をつけて、成長が伺えます。

前年比の伸び率

前年比の伸び率では電子書籍、電子雑誌が名前を連ねるほか、ブルーレイレンタルやコンサートが伸びています。DVDからブルーレイへの移行の一方、フィーチャーフォン関係は軒並み下落。スマートフォンやタブレットへの移行が急激に行われた事を物語っています。

デジタル化率の割合

次にデジタル化率の割合で見ると、ゲームは電子機器がベースであるため100%ですが、静止画/テキストは19.5%とまだまだデジタル化の余地を残しています。コンテンツ市場に対するネットワーク流通の割合で示すネット化率で見ると、全体で15.9%。動画に関するネット化率は2.7%です。これは動画分野での放送の占める割合が高いためであるとされています。
2013年のトレンドとして、パッケージからネットワークへの業態の変化と、それに対するパッケージメディアの落ち込みが見てとれます。物を大量に作って利益率を上げて儲けるというパッケージ販売から、デジタル化で複製化のコストが限りなく0に等しくなったことで、従来的なコンテンツの販売方法とは異なったマネタイズの方法論が必要になってきます。

「クラウド化するコンテンツ〜価値創出のメカニズム〜」

まつもと あつし氏の「クラウド化するコンテンツ〜価値創出のメカニズム〜」の講演のなかで、コンテンツの変遷とマネタイズの難しさが語られました。コンテンツの単純なデジタル化からネット化へ。そこからクラウド化し、さらにその先が待っています。
クラウド化で単にアクセス権の提供だけなら、そこにあるものは同じ物のコピー。希少性の低下を生み廉売化します。バーチャルとリアルという枠組みだけではなく、そこから高い付加価値を与え、差別化を計るためにはコミュニケーションとコミュニティが重要になってきます。パッケージメディアの所有権からサブスクリプションなど月額モデルの使用権への移行もそうした流れで、どうすれば収益から制作のサイクルを回せるか、それらを複合化した新しい枠組みで考え直す必要があるそうです。

音楽分野

白書の中で音楽のカテゴリーを担当したバグコーポレーション 山口 哲一氏はフューチャーフォン向けのコンテンツ着うたなどの落ち込みが挽回出来ていない状況である一方、コンサートなどライブの売り上げが上がってる現状を報告しました。
音楽コンテンツがモデルケースを作らなければならない状況ですが、SpotifyPandraのような海外のクラウドサービスは日本ではまだ無く、キャリア依存型のサービスしか存在していません。キャリア依存型のサービスでは売り上げはありますが、ユーザーのアクティブ率が悪く「着うた」のようなコンテンツの活性化には至っていない状況。一方、サイマル放送型のradikoは放送に準じるため権利もクリアになっており、ラジオ受信機が無い、電波が入らないといったユーザーにニーズがあり、有料のエリアフリー聴取も好調です。
定額制のサービスにおいてはレコード会社とアーティストが契約においてコンフリクトを起こしていて、パッケージ販売をベースにした収益モデルに固執し問題がおきるケースも。一方、販売ルートを含めCDが生き残っているのは日本だけ、そういった付加価値を付ければまだ生き残れるのでは無いかという可能性を示しました。いずれにしても、権利処理とビジネススキームの再構築が必要だという認識です。

オンラインゲーム分野

オンラインゲームの執筆を担当した日本オンラインゲーム協会 事務局長 川口 洋司氏は白書の中でオンラインゲームの変遷と市場規模をまとめています。
スマートフォン、タブレットのオンラインゲームの売り上げは日本が世界最大。オンラインゲームはパッケージ販売から、オンライン課金システム、ソーシャルゲームといった時代の流れの変遷に常に乗る必要がありました。特にアイテム課金は当時だれもやっていない、いわゆる博打に近い賭けだったとも。今ではほとんどのアプリで採用されていますが、そうなるとは誰もが思ってもいなかったそうです。これが後に、ビジネスモデルのパラダイムシフトになります。2013年のゲームの伸びもこうした背景があるとしています。一方、スマートやフォンタブレットのプラットフォームは海外にあり世界共通。ユーザーデータは日本国内には無く、年齢認証などが問題になることがあるそうです。

パネルディスカッション

セミナーの後半のパネルディスカッションでは、デジタル化の中でどう対処していくかが話し合われました。複製権からアクセス権へ変化し、クオリティの担保や体験型のコンテンツで付加価値を与えることがビジネスとして不可欠で、ビジネスモデルの再構築が課題です。従来メディアを含め、権利や利用のあり方を再度議論する必要があるとしています。
業界内にいるとなかなか見えない部分も多いのですが、デジタルコンテンツ白書では統計として全体を俯瞰できます。政策動向、海外動向など詳しくは書籍をご覧ください。

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デジタルコンテンツ白書|一般財団法人 デジタルコンテンツ協会
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