リアルタイム プリビズ 体験セミナー リポート

2013年5月15日 一般社団法人日本映画テレビ技術協会 アニメーション部会主催のリアルタイムプリビズ体験セミナーに参加しました。西武鉄道池袋線 大泉学園駅から徒歩15分 東映デジタルセンター前、Mocap OZスタジオにて行われました。

プリビズってなに?

最近はハリウッドの大作映画でもプリビズの映像が公開されるケースが増えてきました。プリビズ(プレビズ:previz)とはプリビジュアライゼーションの略で「事前に映像化する」ことを意味します。
通常、脚本が完成した後スタッフ間でイメージの統一を行うために絵コンテが作成されます。演出上のイメージを絵に描いて、ストーリーボードを作成しますが、セットの大きさがどれくらいとか、何ミリのレンズを使う、どのくらいの照明が必要なのかといった技術的なアプローチはありません。撮影監督であったり、照明技師、美術などの各パートが経験と知識を基に絵コンテからイメージし、必要機材をセッティングします。
CM等の場合、ビデオコンテ(Vコン)と呼ばれるクライアントとのコンセンサスを得るための動画が作成される場合があります。この場合も最終的なイメージの提示でしかありません。また、演技やカメラの動きを確認するためにアニメーション化することをアニマティクスと呼ぶ場合もあります。
プリビズはさらに一歩進んだ提案を行います。ビジュアルエフェクトやCGとのマッチングを行うためには、事前のプラン設計が必要です。

ACW Previsualization DEEP 山口 聡 氏

日本のプリビズの先駆者である山口 聡 氏はIMAGICAでモーションコントロールカメラシステムMILOを担当し、数々の映画、CMなどの実写とCGとの合成に携わった後、2011年末に独立し、2013年アジアはじめてのプリビズ専門会社ACW Previsualization DEEPを設立しています。
ACW Previsualization DEEP
プリビズの認知度は上最近がってきましたが、はじめは一体何に使うのか、制作費が割けるのかという点でプロデューサーを説得する必要性があったそうです。
プリビズで一番重要な点は「クオリティを上げる」部分にあり、「限られた予算や時間の中でイメージをいかに具体化していくのかをシミュレーションする事がプリビズである」と述べています。そのためには企画を明確にし、スタッフが統一の認識のもと作品を制作する必要があります。
デジタル技術に移行し、様々なカメラがあるなかでフィルムより作業が多くなる点も指摘されました。フォーマット変換やバックアップ、色に関する問題等を含め、作業内容を把握する事や、どこにコストが掛かるかを把握する事も、プリビズのもう一つの目的です。

リアルタイムプリビズ

プリビズを行うには対象物、セット等をコンピュータ上で作成しカメラをシミュレートしなければなりません。現在日本でプリビズが使用されているケースの多くはVFXであったり、作品内でCGを使う場面です。プリプロダクションの段階でプリビズの映像を制作するのに数日間、数週間かかってしまっては意味がなく、その場合バーチャルカメラを使用したリアルタイムプリビズが有効的です。
バーチャルカメラを使用する利点はCGアーティストがシーンを設計するのではなく、実際にカメラマンが操作できる点です。カメラマンがバーチャルカメラを使用することで自然なカメラワークが行え、1カット当たり10分から15分で作業でき、現場に照明、美術など他のスタッフがいる場合には問題点の解決にも繋がります。(映画の場合はほぼ100%バーチャルカメラだそうです。)
モーションキャプチャを併用する事でアクターがどういう動きをするかもチェックできます。キャラクターアニメーションを作る場合より簡単で、人の動線も把握する事が出来ます。ただし、一般的にモーションキャプチャを使用する場合は高価なので、範囲は狭くなり、場合によってはキネクトを使用する場合もあります。
脱線しますが、新しい「Xbox One」ではKinectが標準装備されるそうです。新しいKinectではHDに対応し、精度も向上し心拍数も取得可能とか…。
Xbox Oneの新Kinectは大幅進化、表情や心拍も認識。6人同時に全身キャプチャ – Engadget Japanese

オンセットプリビズ

最近ではプリビズの手法を利用し、CGをリアルタイムで合成するシステムがハリウッドで使われ始めました。グリーンバック等でCGを合成する場合、背景とのマッチングにポストプロダクションで非常に時間を取られる場合があります。オンセットプリビズではこれらを削減するとともに、演技者が対象物を確認しつつ演技をできるという利点もあります。

日本でのプリビズ

日本の技術力が決して海外に劣る訳ではありませんが、日本でプリビズができない理由には制作費の削減と制作行程の複雑化にあります。プリプロの段階で計算して作品を作ることで、時間とコストの節約に繋がり、クリエイターのパワーを充分に発揮し作品のクオリティを高めることができます。
山口氏のコラムです。
Autodesk :: AREA JAPAN | コラム | もしもMotionBuilderでプリビズをしたら

東映アニメーション 野口 光一氏

アニマティクスの場合はCGが担当し、VFX費に組み込まれる事が多く敬遠されがちだったのが、プリビズの場合は制作段階で別料金と認識されるので積極的に活用していますと野口氏は述べています。
監督とスタッフが撮影前に事前にプランニングする事は非常に有効的です。プリビズではCG担当がアニメーションを作って、監督がチェックするというプロセスが必要でしたが、リアルタイムプリビズでは時間的なロスが解消されます。
ただし、セット内に設置したモーションキャプチャとの併用は高価で、大作でしか実現できないという欠点があります。(モーションキャプチャには磁気式、光学式、超音波など様々なタイプのキャプチャ方式やスタジオがありますが、特性を理解する必要があります。)

リアルタイムプリビズを行う理由

なぜリアルタイムである必要があるかという点で、スタッフィングの難しさが挙げられました。CGプロダクションの場合、プリプロの段階でのスタッフのアサインができないという点です。また、CG、VFXとして作業することが時間的、予算的な問題として発生し、別の作業として切り分ける事が効率をあげる事につながります。
実際の撮影現場は状況により変化します。プリビズで大事な点はコンセンサスを取る事で、必ずしもデータ継承が必要なわけではなく、画像やムービーで行う場合もあり、ライブ感が重要だと述べています。プリビズをコミュニケーションツールとして提案できる可能性があります。
野口氏は今後の課題について、カメラ情報だけでなくCGキャラクターとのマッチングが重要になり、プリプロに特化したプリビズの専門会社が日本でも増えればやり易くなるのではと語っていました。
東映アニメーション! TOEI ANIMATION

東映株式会社ツークン研究所 村社 幸司氏

プリビズではカメラマンと監督スタッフの共通認識が出来る点が重要です。通常CGデザイナーやVFXスーパーバイザーなどがカメラのモーションを付ける場合が多いのですが、カメラマンが実際にカメラを振る事でリアルなカメラモーションが実現できます。
「はやぶさ」の事例では、対象物を設置する事でスムーズなカメラオペレーションが可能になったケースが紹介され、さらに新しいバーチャルカメラではレンズの羽根枚数やディストーションに対応するように開発中とのことでした。
最近の案件では機動性が重要視されており、遠隔地やスタッフルームで出来ないかと言う相談もよく受けるそうで、MVN モーションキャプチャースーツを使用するケースもあるようです。
MVNスーツの製品情報
プリビズの使われ方として、海外の事例ではプリビズを用い企画を売り込むといったケースもあるとか。また、日本独自のプリビズの使い方にも注目しているそうです。
ツークン研究所では光学式カメラViconを導入た常設のモーションキャプチャスタジオを設置し、プリビズ&バーチャルカメラの体験会も開催しています。
VICON 三次元動作分析システム・モーションキャプチャ 製品情報
東映デジタルセンター ツークン研究所 プリビズ& バーチャルカメラ体験デモ | CGWORLD
フェイシャルキャプチャも開発しており、モーションキャプチャとフェイシャルを同時に収録するシステムも紹介されました。
ZUKUN LAB. | ツークン研究所
ツークン研究所 村社氏は「バーチャルカメラの開発を行っていますが、カメラマンの方々に使って頂いて違和感の無い物を作ろうと心がけています。」と述べています。
 
プリビズは比較的新しく、認知されるには時間がかかりますが、映像制作を円滑に進めるためにはプロデューサーや監督、スタッフのプリビズへの理解が必要です。
一般社団法人 日本映画テレビ技術協会
 
 
 

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