【FCP X】Final Cut Pro Xについての考察まとめ(更新2013.02.16)

10.0.1、10.0.3(現在10.0.7)とアップグレードを重ねアプリケーションとして様変わりしています。発売当時と比較して何が変わったのか、検証していきます。
返金騒動等いろいろ物議を醸したFCPXですが、問題となっている機能をピックアップしてみたいと思います。(2011年 7月 01日時点)Mac App storeでのみの販売になり、店頭やApple StoreでのFinalCutStudio3(アップグレード版含む)の販売は終了しています。
(更新2013.02.16)法人営業部 アップルコールセンターのみでFinalCutStudio(2009)の販売が再開されているようです。アップグレード版は無く新規の購入のみです。

無くなったもの、まだ実装されていないものなど変更点をいくつか。 (2011年 7月 01日時点)

  1. 以前のプロジェクトファイルが読めない。
  2. マルチカメラ編集。
  3. 素材、タイムラインのTC設定。
  4. ライブラリ上でIN点OUT点が記憶できない。
  5. テープメディアの取り込み、書き出し。
  6. XML EDL OMFの取り込み、書き出し。
  7. タイムラインからMotionへの出力。
  8. プロジェクトの部分書き出し。
  9. PhotoShopレイヤーのサポート。
  10. エフェクトやカラーでの数値入力。
  11. リタイミングの数値入力
  12. DVDチャプターマーカーがない。プロジェクトにマーカーが打てない。
  13. ワークスペースのカスタマイズ。
  14. カラーバーの作成。

打ち消し線は機能追加されたもの、赤字は代替機能のあるものです。
Appleの正式な回答としてはこちら
Final Cut Pro X FAQ(英語)
(追記 2012.02.12)現在FAQは公開されていません。

1. 以前のプロジェクトファイルが読めない。

全く読めません。FCS7との併用が必要です。
ガイドラインでは、Final Cut Pro X, Motion 5, Compressor 4の最善なインストール方法として前のバージョンと別の起動ディスクにインストールすることを推奨しています。そのままインストールしても旧ソフトウェア群はFinal Cut Studioフォルダに退避されますが、自己責任でお願いします。
Final Cut Pro X, Motion 5, Compressor 4:最善なインストール方法 (Apple公式)
iMovieのプロジェクトやイベントライブラリは読めます。

(追記 2012.02.12)
他社ソフトウェアを使用しFCPXからFCP7へ、FCP7からFCPXへのデータの受け渡しが可能になりました。一部機能の違いにより正確に再現されない場合があります。また、XMLを使用しFCPX→FCPXのデータの読み込みも可能です。(一部データは書き出されないためデフォルトデータになります。)
7toX for Final Cut Pro (FCP7からXへのXML変換)
Xto7 for Final Cut Pro (XからFCP7へのXML変換)
共にMac App Store にてオンライン販売されています。
※Automatic Duck はAdobeに吸収されアプリケーションは無料になりましたが、Pro Export FCP 5は10.0.3以降では動作しません。(現在は頒布されていません。)
(追記 2013.02.16)
CatDVを使用することでFinal Cut Pro 7からFinal Cut Pro XへのXMLを利用したプロジェクトの転送を行うことが出来ます。Final Cut Serverを使用している場合、マイグレーションツールを使用することでメタデータとアセットをインポート出来るようになります。
CatDV – ASK DCC 株式会社アスク

2. マルチカメラ編集。

まだできません。PVや番組などマルチカメラ編集を使用していた方には残念な仕様です。次期メジャーバージョンアップでの対応を表明しています。AppStoreの場合、アップデートは基本無料ですが、いままでパッケージであったようなバージョンアップ版という考え方はないと思います。現時点で、このメジャーバージョンアップが有料か無料かはまだわかりません。
現状ではクリップを同期(ショートカット: option+command+G)してタイムライン上で無効にする(ショートカット: V)しながら編集するのがよいでしょう。

(追記 2012.02.12)
10.0.3アップデートでマルチカメラが実装されました。メジャーバージョンアップでの対応とのことでしたがこのバージョンは全てのユーザーが利用可能です。
マルチカム編集についてはこちらに詳細があります。
【FCP X 使い方 Tips :11】FCPX マルチカム編集 1
【FCP X 使い方 Tips :11】FCPX マルチカム編集 2

3. 素材、タイムラインのTC設定

ここで問題になるのが素材、タイムラインのTC設定です。同期したクリップや複合クリップの開始TCの変更ができません。
例えば、20:00:00;00に収録を開始した3カメがあった場合にも、常にプロジェクトは00:00:00:00でユーザーが指定することができません。読み込んだクリップは内部では複合クリップと同様に扱われますので多分できるはずなんですがユーザーに開放されていません。
また、プロジェクト上で作成した複合クリップの名前も変更することはできません。(イベントライブラリ内で作成したものは変更可能)また、クリップをプロジェクトからイベントライブラリに移動することはできません。
結果、プロジェクト上には大量の複合クリップが存在することになると思われます。

(追記 2012.07.05)
名称は変更可能です。複合クリップを選択し、インスペクタの情報タブで、名前フィールドに入力するか、「複合クリップを編集」でかえることが可能です。また、カスタム名を適用で命名規則を変更することができます。
(追記 2012.02.12)
10.0.1アップデータでプロジェクトにカスタムの開始タイムコードを設定できます。また、複合クリップも設定を編集できタイムコードを設定できます。
(追記 2013.02.16)
10.0.7では複合クリップの開始タイムコードがグレーアウトしており、変更できません。

4. ライブラリ上でIN点OUT点が記憶できない。

いままでは素材をIN点(ショートカット: I )、OUT点(ショートカット: O )で管理し、切り出していったと思われます。FCPXではイベントライブラリ上で選択範囲を指定しキーワードで管理するという方法をとっています。
アバウトで切り出す場合には問題がないのですが、1Fずつ正確に選択範囲を指定したい場合にはかなりストレスになると思います。例えば、← →でフレームを見ていって ↑ ↓ を押して違うクリップを選択した瞬間に消えます。いずれにしても、違うクリップを選択した瞬間に消えます。そういった場合、マーカー(ショートカット: ?M)を利用した方が良いでしょう。
これはユーザビリティの問題です。

(追記 2012.02.12)
クリップの選択範囲はキーワードで管理します。キーワードコレクション、スマートコレクションやメタデータを使用しクリップを検索します。よく使う項目や不採用などを利用しクリップを選択することでスマートに素材を選び出すことができます。
(追記 2013.02.16)
10.0.6アップデートでイベントブラウザでの選択範囲の維持と複数の選択範囲が出来るようになりました。イベントブラウザでほかの場所をクリックしてもIN点、OUT点の選択範囲が解除されなくなりました。追加の選択範囲のIN点はCommand + Shift + I で、OUT点はCommand + Shift + O で設定します。複数の選択範囲を維持したままIN点やOUT点を移動することもできます。イベント内の個々の範囲を削除するには:Option キーを押したまま範囲をクリックします。

5. テープメディアの取り込み、書き出し。

既存のテープ、カメラによる入出力を担わないという方向に転換したと思われます。一部、DV、HDVのカメラにはIEEE 1394での入力に対応しているようです。
FCPXに対応するカメラ一覧 (Apple公式)
AJAはVTR Xchange、BMDはMedia Expressなど外部アプリケーションで入出力を対応します。インジェストと編集は別扱いでスマートになり、いままでのようなVTRコンフィグレーションをいろいろ触る必要がなくなります。
(追記 2012.02.12)
10.0.3でブロードキャストモニターの出力(β)がサポートされました。再生環境によっては駒落ちなどが発生するため、書き出してからテープへの吐き出しを行った方が賢明です。

(追記 2013.02.16)
ドライバーをインストールし、設定を行えばブロードキャストモニターの出力が可能です。Blackmagic Design Media Expressでのキャプチャー、アウトプットのレゾリューション及びフレームレートはハードウェアに依存します。AJA VTR Xchangeではキャプチャプロセスを自動的にFCP Xのイベントとして作成する機能が含まれました。

6. XML EDL OMFの取り込み、書き出し。

現状、FCPXはオフライン機としてはあまり役に立たないと思われます。ノンリニアでのオフラインは、元来データが重くて動かないために軽いデータで作業を行うために存在します。Thunderbolt環境でProresや非圧縮の作業環境が構築できるため、オフラインという存在自体を無くしたのかもしれません。対応策として、AAFとOMFの書き出しが、automaticduck製のPro Export FCP 5.0($499)を使用することで、可能になります。XMLの書き出しはAPIが数週間後にサードパーティ開発者用に提供される予定です。

(追記 2012.02.12)
EDL、OMFなどの取り込み書き出しはできませんが、XMLの読み込み書き出しは対応しました。ただし以前のFCP7までのXMLとは別物で互換性はありません。(FCPXML)10.0.1ではFCPXML1.0で、10.0.3はFCPXML1.1になりこちらも互換は取られていません。Blackmagic DaVinci ResolveやMedia Expressで読み込むことが可能です。(一部の機能は再現しません。)サードパーティー製品で以前のFCP7とのやり取りは可能です。
(追記 2013.02.16)
10.0.6アップデートでFCPXMLのバージョンが1.2に変更されています。FCPXML1.2ではオーディオコンポーネントの項目とメタデータのインポートとエクスポートの項目が追加されています。
Final Cut Pro X XML Format(PDF 英語)
また、EDL-Xを使用し、FCPXのXMLからCMX 3600のEDLに書き出すことが出来ます。
EDL-X(Mac App Store)
X2Proを使用することでXMLからAAFの書き出しができるようになります。
X2Pro Audio Connvert (FCPXからProToolsへのオーディオコンバート)
DaVinci Resolve、Autodesk SmokeなどではFCPXのXMLを直接読み込むことが出来、タイムラインを再現できます。

7.タイムラインからMotionへの出力。

FCP7では可能だった、タイムラインからMotionへ転送することができません。代わりにエフェクト、トランジション、タイトル、ジェネレーター、テーマの各ブラウザから右クリックで「コピーをMotionで開く」を選択します。(選択できないものもあります。)

Motion側ではFinalCutPro用に書き出しをする必要があります。前のように一部分だけを切り出してコンポジットツールとしてMotionを使うという使い方から、FCPXのテンプレート作成用として機能するようになりました。
Final Cut Studio (2009) の「送信」メニューコマンドで、間違ったバージョンのターゲットアプリケーションが起動する(Motion5が起動する)場合はこちら(Apple公式)をご覧ください。
(追記 2012.02.12)
現在も直接Motionで開くことは出来ません。10.0.1で追加になったロール機能を使用することでクリップの一部および複数部分の書き出しが可能になりました。オリジナルのクリップではないため前後ののりしろは付きません。
【FCP X 使い方 Tips :7】Final Cut Pro Xアップデート(10.0.1)ロール機能
(追記 2013.02.16)
Clip Exporterを使用することでAfterEffectsやMotion用にクリップを切り出すことが出来るようになります。QuickTime参照ムービーとして書き出すことができたり、ハンドルの指定や、命名規則を定義できます。
Clip Exporter for Final Cut Pro X

8. プロジェクトの部分書き出し。

上記にある通り、プロジェクトの部分書き出しが出来ません。プロジェクト単位になります。
(追記 2012.02.12)
上記同様10.0.1で追加になったロール機能を使用することでクリップの一部および複数部分の書き出しが可能になりました。
(追記 2013.02.16)
10.0.7ではクリップにインアウトをマークすることで部分的に書き出すことが出来ます。これはプロジェクト、イベント双方で使用可能です。ロール機能を使い個別のファイルにして書き出すこともできます。(クリップが存在していない部分は黒みになります。)

9. PhotoShopレイヤーのサポート。

レイヤーはサポートしていません。レイヤーごとに使用したい場合はMotionを使用しなければなりません。マージされたαチャンネル付きの画像は読み込み可能です。
(追記 2012.02.12)
10.0.3でPhotoshopのレイヤーを維持したままインポートすることが可能になりました。レイヤー効果が入っている場合うまく読み込めない場合があります。レイヤー効果を維持するにはスマートオブジェクトに変換するか統合する必要があります。また、現在レイヤーサポートは8bit RGB以外には対応していないようです。
(追記 2013.02.16)
Photoshopのレイヤーを維持したままインポートする場合いくつか制限があります。8bit RGBであること、調整レイヤーを結合する必要があることに加え、レイヤースタイルを使用している場合は下に空レイヤーを作成し「下のレイヤーと結合」する必要があります。
レイヤー化されたグラフィックファイルを作成するための最良の方法 (ベストプラクティス)
また、一度読み込んだPSDファイルに新たにレイヤーを追加した場合は、追加された分のレイヤー数が無視されるため再度読み込み直さなければなりません。(再接続では反映されません。)

10. エフェクトやカラーでの数値入力。

映像の色変更の設定が「カラー調整」のみになります。FCS7のイメージコントロールや色補正にあった項目(ガンマ補正や3ウェイなど)は無くなっています。補正はいくつでも適用可能ですが、数値入力できません。また、補正はプリセットに保存可能です。カラーボードは慣れれば直感的に色を決めやすいと思います。カラー自体にはキーフレームがなく、詳細な調整はフィルターワークかMotionが必要かと思われます。

以前のColorのデータは読むことができません。
また、コピーペーストが、エフェクトでペーストのみになり、変形やクロップなど個別に選択してペーストできなくなりました。位置のスムーズは選択変更できますが、回転、XY調整などはスムーズの選択ができません。フィルターの基本3Dやモーションブラーが無くなりました。

(追記 2012.02.12)
カラーの数値入力が可能になっています。数値部分を選択し、マウスのセンターホイールで上下に動かすことが出来ます。これは変形などのエフェクトも同様です。10.0.3のFCPXML1.1の書き出しでプライマリーカラーのASC CDL (米国撮影監督協会 カラーディシジョンリスト)の形式に沿ってエクスポート出来るようになりました。エフェクトのパラメーターやオーディオキーフレームなどの書き出しも可能です。
【FCP X 使い方 Tips :12】FCPX 10.0.3 FCPXML1.1について
(追記 2013.02.16)
10.0.7では「編集」>「パラメータをペースト」コマンドを使用し、コピーしたクリップのパラメータをほかのクリップに個別に適用できます。「エフェクトをペースト」コマンドではすべてのエフェクトをペーストします。

11. リタイミングの数値入力

リタイミングの数値入力ができません。リタイミングエディタを引っ張らなければいけません。
(追記 2013.02.16)
RE:Vision Effects社のTwixtor FxPlug for FCP がFCPXに対応しています。数値入力でキーフレームが打てるだけでなく高度なスローモーションを作成できます。
RE:Vision Effects社のTwixtor フラッシュバックジャパン

12. DVDチャプターマーカーがない、プロジェクトにマーカーが打てない。

DVD Studio Proの販売が無くなったのでチャプターマーカーも無くなりました。どうしても付けたい場合はCompressorを使用してください。プロジェクト上にマーカーが打てないのが地味に痛いです。

(追記 2012.02.12)
Compressor 4.0.2でCompressorでマーカーがデフォルトでチャプターマーカーとして設定されます。
(追記 2012.02.15)
FCPXでのマーカーはCompressorには送信できません。
(追記 2013.02.16)
10.0.6アップデートでマーカーをチャプターマーカーに変更できるようになりました。
【FCP X】FCPXでチャプターマーカーをつける

13.ワークスペースのカスタマイズ。

ウインドウが固定になりました。ウインドウは隠すことができます。最小構成はイベントブラウザ、ビュアー、タイムラインの3つでとてもすっきりしています。さらに イベントやビュアーをセカンドモニターに表示することが出来ます。
(追記 2012.02.12)
10.0.1でOSX Lionでのフルスクリーンをサポートしています。10.0.3ではブロードキャストモニターの出力(β)がサポートされ、A/V出力を選択できます。オリジナルレイアウトに戻すコマンドでレイアウトを戻すことが出来ます。
(追記 2013.02.16)
10.0.6で読み込みウインドウの統合、共有機能の改良がおこなわれ、イベントビュアーでデュアルビュアーがサポートされました。

14. カラーバーがない。

存在自体が無くなっています。テープメディアを排除しているので、無くても良いと言われればそれまでなんですが…。ジェネレーターの「白」は100%ではないので、ご使用の際はご注意ください。

(追記 2013.02.16)
ちなみにAdobe Premiere CS6にはSDカラーバーに加え、HDカラーバーがジェネレーターとして存在します。PremiereのHDカラーバーは放送用のARIB準拠なのでこちらの方が使えるかもしれません。
その他、10.0.1ではXsan への接続、10.0.3ではマルチ編集でのフォーマットやフレームレートの混在や高度なクロマキーイング機能、メディアの再接続などの機能がアップデートされています。
かなり使えるツールに近づいてきました。
 
 
 
 

13 thoughts on “【FCP X】Final Cut Pro Xについての考察まとめ(更新2013.02.16)

  1. babooon says:

    12のDVDチャプターの付け方がどうしてもわかりません。
    「10.0.3でCompressorでマーカーがデフォルトでチャプターマーカーとして設定されます。」とありますが、FCPXのマーカーはCompressorでは出てこないっぽいです。ためしにマーカーにと打ってみましたが、ダメでした(w
    こちらは、どのように操作された場合、ということでしょうか?

  2. ishicaw says:

    babooon さん、コメントありがとうございます。これは自分も誤認していて10.0.3ではなくCompressor 4.0.2での修正でした。なのでFCPXからはマーカーは書き出されません。「Compressorでマーカーを打った場合に、DVD書き出しなどでデフォルトでチャプターマーカーとして設定されます。」ということらしいです。記事も機能追加ではなく代替機能に修正しました。せめてマーカーの書き出し→読み込みくらいは行けてもと思うんですけどね…

  3. babooon says:

    やはりそうでしたか‥。Compで地道にマーカー打ってみます。でもこのサイトはとても参考になりました。ありがとうございました。

  4. @birdie_time says:

    Final Cut Pro Xでカラーバーを作成するにはどうすればいいのか調べてたらこんなページがあった。どうやら出来ないっぽい。しかもFCPではできてFCP Xで出来なくなったとのこと。うーん,どうしたものか。 – http://t.co/Nazd98hwMM

  5. @Akihio5586 says:

    @movie_horiken http://t.co/ITnURB61WG
    最新版だとomfの代わりにxmlってやつを採用してるみた。ただこれProToolsで読み込めるのか微妙なので、もう少し細かいこと確認でき次第また連絡しますね。
    こちらの情報不足で混乱させてすまない。

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